So-net無料ブログ作成

be with you [あなたと一緒に] 22 [SPEC]

看護婦が一人後から入っていったきり、誰も通ることもなく
忘れられたようにひっそりとした薄暗い廊下。

当麻は椅子にもたれかかり、手術中のランプをただ見つめながら
無影灯に照らされているであろう瀬文を思い浮かべその無事を独り祈っていた。

靴音がせわしなく響いてくるのが聞こえても尚、当麻はランプから目を離さない。

「すまんのー、役に立てなくて・・・。で、瀬文はどうじゃい?」

吉川の問いかけにも力なく首を横に振る。

それ以上、掛ける言葉が見つからず吉川は静かに向いのイスに腰を下ろした。

当麻の姿は、瀬文の命と呼応するかのように時折うっすらと消えそうに滲んで
それは幻想と言うにはあまりにも奇妙な光景で吉川は思わず息を呑んだ。

当麻の姿がはっきりとその姿を取り戻した時、手術中のランプの灯りが消えた。

やがて、ストレッチャーに乗せられた瀬文と共に海野が出てきた。

「手術は成功しましたよ。後は本人の生命力の問題でしょう。
 普通の人ならねぇ。
 まぁ、でもこの人の場合、
 銀の杭でも打ち込まないと死なないんじゃないですか?」

「なんやと、もういっぺんいっみやがれ!」

今にも掴みかかりそうな吉川を怪しげな笑顔で諭しながら、
その一部は胸に刺さっており、
瀬文が握って離さなかったという小さな木片を当麻に見せた。

――これは・・・。きっと、あの時の・・・。

そう、瀬文が両親の墓の前で大事そうに懐にしまった小さな仏像なんだと当麻は思った。

吉川は当麻の眼に光が戻ったのを確認すると「今日は休んでいい」という野々村からの言葉を伝え、
「瀬文を頼んだぞ。また後でくる」とだけ言い残し帰っていった。


あれからどれくらいの時間が過ぎたのだろう。
時折、うなされるように呻き声を漏らすが瀬文の意識はまだ戻らない。
ただ生きているという証のようにベットサイドモニターの画面が規則正しく波形を刻む。

窓を少し開け外の景色を眺めると夕日はすっかり姿を消し、大きな月が浮かび始めていた。
いつの間にか季節は秋を過ぎていて、冷たく流れ込む夜気が当麻の頬を撫でる。

「とう・・・ま」

瀬文の手が当麻を求めて彷徨う。
その手を包み込むように当麻の手が触れた。

『ああ、あの時と同じだ』そう思った時、
瀬文の手が、そっと伸ばされて当麻の身体を抱き寄せた。

「会いたかった」

瀬文の微笑みは痛みに歪みながらも何処か懐かしげで
眩しそうに目を細めて当麻を見た。

じんわりとした体温が、まるで瀬文の存在そのもののように身体に染みてくる。
胸の鼓動が、瀬文にも聞こえるのではないかという位に大きく鳴っていた。
木枯らしに揺らされる窓のように、瀬文を手繰る指が震えたのを感じた。

いつしか盛大なイビキをかき、安心したように眠りについた瀬文を前に

「瀬文! 起きろ! 寝んな!」

咄嗟に出たのはそんな言葉で、自分に少しだけ笑ってしまい、
掴まれたままの手を強く握り返した。



面会時間も残り少なくなった頃、志村と美鈴が並んで歩いて来た。

「お兄ちゃん、瀬文さん大丈夫かな?」

「大丈夫だ、そんなに心配するな」

二人は、瀬文の病室の前で足を止め
何やら一人で悶えている吉川の姿を見つけた。

「どうしたんですか、吉川さん?」

「ああ、志村か。わし、あの二人の間には入れんわ」

扉を少しだけそっと開け、見て見ろとばかりに病室の中を指さす。
そこには、ベッドの傍らのイスに座り瀬文の胸元に顔を埋めるようにスヤスヤと眠る当麻の姿と
当麻の左手を思い切り掴んだまま眠っている瀬文の姿があった。

「とう...ま」

瀬文の掠れた譫言が聞こえ三人は一瞬びくりとした。
そして何も言わずに目を合わせ、軽く頷ずきあってまたそっと扉をしめた。

どこか暗い表情の男二人とは対照的にすっきりした表情の美鈴が話し始める。

「お兄ちゃん、そんなに落ち込まないでよ。ってか、とっくに振られてんじゃん」

「あーあ、三人とも失恋しちゃいましたね」

「えっ? わしは...別に...」

吉川が必死に手を横に振っている。

「ま、いいからいいから。
 帰ってビールでも飲みますか。
 三人で飲みますか・・・」

そう言う美鈴に引きずられるように三人は仲良く(?)帰って行った。





さて、このままの甘い雰囲気で結婚式に戻るのもありかもとも思いますけどね。
でも、それは大間違いかもしれませんよー。(笑)
まだ、解決されてないことあったような?(←何か企んでやがるだろ!)
という訳でもうちょっと続きます。

では、また。


タグ:当麻 SPEC 瀬文
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:テレビ

be with you [あなたと一緒に] 21-4 [SPEC]

暗闇の真ん中で再び目を閉じた。
あたしは一人また闇に包まれる。

死ぬことに恐れはない。
今では懐かしさすら感じる、あの『闇』に戻るだけだから。

どれ程そこにいて、どれくらいそこを漂っていたのか、
それはもう思い出せないほど遠い昔のことのようであり昨日のことのようにも思える。

そこで見た世界、自分がいない世界。
その世界で生きたいと願った、束の間でいいから、夢でもいいから・・・。
そんな夢を現実にしてくれた瀬文さんには感謝だ。

『さよなら、瀬文さん。そして、ありがとう・・・』

そう独り呟いた直後、銃声がして衝撃の代わりにドサリという音がした。

そして、もう一発銃声が響いた。

何が起こったのか分からなかった。
いや、本当は分かってたのかもしれない。

大きく息を吐き目を開ける。
最初はぼんやりと段々とハッキリとしていく視界が怖かった。

空に顔を向け、大きく息を吸い込むと
どこかで嗅いだことのある懐かしいような血のにおいが鼻をつく。

心の中で、何かが砕け散ってゆく。

襲ってきたのは手足の冷たさと震え、どうしようもない喉の渇き、そして・・・絶望。
じわじわと目のあたりが熱を持ち痛みだす。

目の前の黒い塊に血だまりに沈んでいった石原の姿が重なる。

そして後を追う為に自分に銃を向けた女の声が聞こえたような気がした。

「この人と一緒じゃなければ・・・、そうしなければ生きていけないから
 そこ以外に居場所なんてないのだから」

ああ・・・、ここもあたしにとってはもう『闇』なんだ。

そう思った瞬間、叫んでいた。

「瀬文さーん!」









まずいな……。そう瀬文が感じた時、セカイの銃が当麻に向けられた。

瀬文は僅かに人の気配を感じ、足元に目をやる。
螺旋階段でゴーグルが一瞬光った。

それを確認すると同時に瀬文はセカイと当麻の間へ飛び出す。
セカイが引き鉄を引いた。

直後、「バスッ」と遠くから一発の銃声が響き
セカイの額をまっすぐに貫いた。
更に、もう一発の銃弾がセカイの手にあるデバイスを砕く。

間髪おかず数発の銃弾がセカイの胸めがけて放たれ、セカイの身体が踊るように崩れ落ちる。

「瀬文ー!」

里中は瀬文に駆け寄ると頸動脈に指を当て厳しい顔を少しだけ緩め
瀬文の息があるのを確認して志村を呼ぶ。

「おーい、志村! 瀬文を頼む」

里中に呼ばれた志村が、「先輩ー!」と勢いよく駆けてゆく。

当麻は茫然と座り込んだままだ。

当麻に歩み寄った里中はしゃがみこみ、ロープを外しながらうつむく当麻の顔を覗き込む。

「当麻ちゃん、大丈夫か?」

「里中さん・・・」

今にも零れてしまいそうな程に潤んだ瞳の当麻が顔を上げた。
その二人の前を数人の隊員達によって運ばれていく瀬文。
当麻は瀬文の姿を目で追ったまま

「瀬文さんは?」

「大丈夫だ。
 あいつはそう簡単に死んだりしねーよ。
 大事な相棒を残していったりするようなヤツじゃない」

里中の大きな手が当麻の肩をぽんぽんとたたく。

当麻の瞳から、一滴の涙が落ちた。

程なくして瀬文を乗せた救急車のサイレンの音が遠ざかっていく。

「立てるか?」

「無理みたいっす」

少し照れたように当麻が答える。

「じゃ、しっかり捕まってろ」

里中が当麻を抱き上げ歩き出す。

「あれだな」

「えっ?」

「こんなとこ瀬文に見られたら、俺殺されるかもな?」

里中が人懐っこい目をして悪戯に笑う。

「里中さん・・・」

ふっと当麻が微笑んだ。

「おっ、やっと笑ったな当麻ちゃん」

「あいつはいっつもあんたの心配ばっかりしてたよ。
 まあ、本人には何にも言わないだろうがな。
 瀬文って男はそういうやつだ。
 だから、あいつの目がさめたら今度は思い切り心配してやってくれ」

「そうだ、青池さんは?」

「青池はSIROの連中が無事救出した。
 爆弾も処理したぞ! ま、処理班がだけどな。
 日本の警察なめんなよ。あははっ」

「さあ、病院・・・いや瀬文のとこ行くぞ」

「えっ?・・・はい」

二人を乗せた車は、朝焼けの迫る薄明かりの中を進んで行った。








事件の謎と結末はいかがでしたでしょうか?

やっと決着が着きました。(←なげーよ!)
でも、まだまだ結婚式にはつながりませんけどねぇ。(笑)

里中さんと会うたび当麻のことばっかり話してる瀬文さんとか
番外編で書いてみたら面白いかな?
とか、ゆっくり書く暇もないくせにいらんことばっかり思いつく今日この頃であります。

さて、次は少しは甘くなるんでしょうか?

では、また。





タグ:当麻 SPEC 瀬文
nice!(0)  コメント(2) 
共通テーマ:テレビ

be with you [あなたと一緒に] 21-3 [SPEC]

セカイの言葉に、当麻は何も言い返すことはしなかった。

瀬文は、首の後ろに冷たいものを感じて
その顔は赤から青へと色を変えていく。

「瀬文、いくらお前の精神力が強かろうがさすがにそれは無理か?」

「たとえどんな罪を背負っていようが、人一人の命は重い。
 今のお前に唯一無二の存在に銃を向け、そいつを殺す気持ちが分かるのか?」

「わからないねぇ」

「当麻、それともお前が瀬文を撃ってみるか?」

再び嘲笑を浮かべるセカイを当麻が受けて立つ。

「誰が、撃つかよ!
 瀬文はあたしの誇りだ!」

「少なくともおまえとは違う。
 人の為に死ねるんだよ。バカなんだよこの男は・・・。
 自分の命より守りたいものがてめぇにあんのか?
 何が先人類だ! 何がゲームだよ! 只の人殺しだ!
 てめぇは神なんかじゃねぇ」

「うるせぇ!
 お前が我々を語ることは赦さない。
 俺を語ることは赦さない。
 何も赦さない。
 赦さない・・・」

セカイの目には強い光がやどり、どす黒い怒りが支配している。

「瀬文、とっとと当麻を撃て!
 サクッと終わらせろ!」

「てめぇ、命なめてんじゃねぇぞ」

当麻が真っ直ぐに瀬文を見つめる。

「瀬文さん、刑事に私情は禁物です。もう一度、撃って下さい。
 きっとあたしが死ぬまでこいつのゲームは終わらない」

瀬文が真っ直ぐに当麻を見つめる。

「当麻、おまえ・・・俺に撃たれた記憶が・・・」

記憶があるのか? そう聞いた瀬文に小さく頷いた。

覚えているのか、あの日のことを?
覚えているのか、俺のことを?

記憶は愛だ。
俺は覚えている。
お前と出会ったこと。
共に過ごした日々を忘れることなどできない。

当麻の方はどんなところを記憶にとどめているのだろうか。
それらはどれだけ重なっているだろうか。
俺が当麻を大切に思う気持ちと同様に当麻も俺を大切と思っているだろうか。

「瀬文さん、あたし覚えてます。全部。
 ちゃんと駆けつけてくれたこと。
 約束を守ってくれたこと。
 そして、あたしを見つけてくれたこと。
 強く、強く掴まえてくれたこと・・・」

「とう・・・ま・・・」

「あたし思うんすよ。
 ひょっとしたら、あたしたち前世ってやつでも出会ってたかもしれないって。
 だからですかねぇ、何度だって瀬文さんとは会えるような気がするんですよ。
 瀬文さんに見つけてもらったおかげで、もう二度と会えないはずの人たちにも会えた。
 父上、母上、おばあさま、陽太・・・、
 係長、吉川さん、美鈴ちゃん、里中さん、みんなみんな・・・。
 嬉しかった・・・。だから・・・もう・・・いい」

「瀬文さん、すいません。また巻き込みます」

二人の視線は行き合い、静かに時は流れだす。

「どこにいようと必ず探し出す。
 だから、今度こそ来世で待ってろ」

「うっす」

そう言って、二人は微笑みを交わす。
同じ笑顔を浮かべて同じ思いを共有する。
あの日あの時、そうしたように・・・。

瀬文はゆっくりと銃口を当麻に向ける。

苦悩と恐怖で瀬文の心臓は大きく鼓動していた。
思い出が泡のように浮かんでは消え浮かんでは消え指が震える。

あの時の俺に出来た事はただ一つのことだけ。
最後まで戦い抜こうとする誇るべき友の虚ろな眼窩を見つめ続ける事だけだった。
今だってそうだ。何も変わらない。

なぜ、神はあえて片翼だけをもぎ取るのか?
なぜ、神は何度も試練を与えるのだ?
そんな問いに答えはきっとない。
運命というには諦めきれず
宿命というなら残酷だ。

瀬文の指が動こうとした時、当麻が反射的に目を閉じた。

風の音が意地悪く瀬文を囃したてると
雲と重なって消えていった当麻が目の前をよぎって瀬文の右目の奥が熱を帯びる。

「ぐ、ぐぐっ……。
 撃てん。もう二度と俺におまえは撃てん」

銃を下ろした瀬文が震える声で言う。

「随分と弱気だな。さっきの威勢はどこにいった?
 まあいい。それならそこで見てろ!」

セカイはそう言って、銃を一旦空に向けから照準を当麻に合わせた。

まずいな……。
急激に上昇してゆく意識レベルと共に
突如、脳裏に強い光が煌めく。

『ダッ』 と何かが動いた。

『パンッ』 と一発の銃声が響く。

瀬文の身体が当麻の前で崩れ落ちた。
当麻へと向かって伸ばされた手はすぐに力を失い
少し微笑んだまま静かに目を閉じた。












すいません、途中で・・・。
21はもう少しだけ続きます。
次回こそ決着つきます。

では、また。

タグ:当麻 SPEC 瀬文
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:テレビ

be with you [あなたと一緒に] 21-2 [SPEC]

『とうまー!』

瀬文の心の叫びに呼び覚まされるように当麻が意識を取り戻した。

『・・・うっ』

後頭部に痺れるような痛みが走るが、抉じ開けるようにして重い瞼を開く。
ぼんやりとした景色がはっきりとしたものになってゆくと目の前の光景に息を吞んだ。

当麻の目の前に飛び込んできたのは、見知らぬ青年と
自分のこめかみに銃口を突きつけている瀬文の姿だった。

「瀬文さん・・・?」

声を発するのと同時に駆け寄ろうとして身動きできない自分に気がついた。

そして、もう一人の男の顔を見てさらに大きく目を見開いた。

さっきまで見覚えのなかった青年の顔の下から現れたのは、忘れる筈もない男の顔だった。

「セカイ!」

――ん? セカイ? 何故、当麻がこの男を知ってる?

「なんで、おまえがここに?」

「さあな」

セカイは相変わらずの薄笑いである。

「てめぇの狙いはあたしだろうが! 瀬文は関係ない!」

興奮する当麻に対して、セカイは相変わらずの薄笑いである。

「関係なくはないだろう。瀬文はゲームの大事なコマの一つなんだからさ。
 憤怒、wrath、狼、天涯孤独の男。どうだ、ぴったりの人選だろ?」

「で?
 8つ目の罪とされる『正義』・・行き過ぎた正義はあたしのことってか?
 そんなら自分の考えが絶対に正しいと思い込んでる、てめぇもだろうが!」

「いい度胸だ。褒めてやる」

「ぐっ・・・くそっ・・・」

身体を動かそうとして身をよじる度に、縛られている所が一層の熱を帯びる。

「殺したきゃ、あたしを殺せばいいだろ!
 血の果てだろうが、地獄の果てだろうがつきあってやる」

「でもその前に青池さんの居場所を教えろ!」

「青池里子・・・なら、ここだ」

何かのデバイスを取り出し画面を軽くタップして見せる。

「一つの罪一つのペアが完成するごとに爆弾を一つ仕掛けた。
 青池里子は最後の爆弾と一緒だ。
 このスイッチ一つで起爆装置が起動する。一つ試しに起動してやろうか?」

「やめろ! このうすぎたない犯罪者が!」

息を荒くした瀬文がいきなり叫んだ。
引き鉄を引こうとする自分の右手を左手で抑え込んでいる。

「あらら、びっくり」

驚いたというよりはもはやセカイは呆れ顔である。

「マインドコントロールなんてもんは俺には効かねぇ! 俺の精神力をなめんな!
 お前は一体、何がしたい?」

セカイの顔を覆っていた微笑が消えた。

「今回は人間の身体を持ってみて人間がどんなに愚かで滑稽な生き物なのか更によく分かったよ。
 今この時も、懲りもせず戦争だテロだのと殺戮が繰り返されている。
 所詮、絶望と崩壊に向かっている。このスイッチを押さなくても、いずれこの世界は終わる」

言い返えせない真実に当麻が悪態をつく。

「どうやって甦ってきた、このゾンビ! 地の底へ帰りやがれ!」

「おいおい、当麻だけには言われたくないぞ。寧ろ『神』とでも呼んで欲しいね。
 お前こそ、もう一度地獄へ堕ちろ!
 お前が消えても、何事もなかったかのように時は流れていく。
 お前は永遠に存在しなくなる」

「お前は神なんかじゃねぇ、だから俺はお前を殺す!」

瀬文は今にも爆発してしまいそうな怒りを鎮めるように大きく息を吐いた。

「確かにこの身体なら殺せるが・・
 そんなことをしたら、青池里子は死に、東京は火の海だ。
 それが嫌なら、俺ではなく当麻を殺せ!」

「今、再び当麻を撃て!」

嘲笑うようなセカイの声が闇夜に響く。 
nice!(0)  コメント(2) 
共通テーマ:テレビ

be with you [あなたと一緒に] 21-1 [SPEC]

当麻が消えた・・・。

無数の八咫烏に運ばれていった当麻の姿を思い出した瀬文の心の中が闇で覆い尽くされていく。

「当麻!! どこだ?」

焦る心とは裏腹に静かな空間にただ時だけが刻まれていくのだった。

『大事なものを失くした場所』

大事なもの?
俺にとって大事なものは何だ?

やがて、曖昧な感情がはっきりとしたものに変わる。
そして、酷く残酷な指の名残がその場所を知らせた。

それは、冷たい喪失が終わりのない始まりを告げた場所。

「あそこだ!」

瀬文は一人叫んで駈け出した。
身体が自然に動いていたのだろう、視界の揺れで自分が走り出したのに気付いたほどだ。

『当麻、無事でいろ!』そう心の中で祈り続けて
電波塔へとつづく階段を駆け上がっていった。


階段を上りきって、目にしたのはぐったりと意識もなく座り込んでいる当麻の姿と
煌々と輝く満月を背にして立つ、ぞっとする程の美しさを持った青年だった。

青年は天使のような悪魔の微笑みを湛えていた。、
その微笑みに人は心を奪われ、破滅へ誘われるのだ。
満月のように人の心を狂わせ、犯罪へ導き死へ誘(いざな)うのだ。

瀬文もまた、その微笑みに魅入られた一人だった。

「瀬文さん、お久しぶり」

そう言う青年の顔は、見覚えのあるものだった。

「おまえは! あの時の・・・。
 当麻に何をした!」

「何もしてないって、おーこわっ」

青年は、軽く上げた両手を左右に振りながらふんと鼻先で笑った。

「浅倉てめぇ」

「まあまあ、そう怒らないで。
 色々とヒントをあげたのに気付かないあんたが悪いんでしょ」

「当麻を放せ! じゃないと撃つ!」

「だから、落ち着けって。
 あんたに俺は撃てないよ。嘘だと思うなら撃ってみなよ。
 あんた死ぬことになるよ」

これが、当麻が言っていた。
マインドコントロールというやつなのか。

『瀬文さんは監禁されてたんですよね。その時の記憶ないんですよね。
 それって、何らかのキーワードで行動を起こすように
 マインドコントロールされている可能性があるってことですよ』

瀬文は、そう言った当麻の言葉を思い出していた。

「それより、いい加減色々と思い出してもらおうか。
 瀬文、真山を殺したのはお前だ。さあ、思い出せ!」

記憶はどれだけほんとうか、一体全てを覚えているものなのか、
事実かも知れない記憶を思い出した途端
記憶の底からその幻につながって現れたのは、

閉ざされた牢獄のような世界。
夢うつつに見た当麻の笑顔。
確かに感じた当麻の感触。
歪んでゆく景色と強い光に導かれるようにはじけ飛んでゆく光の粒。

あの日の情景・・・。
真山の声・・・。

「おい、瀬文撃て。俺に当たっても構わん、なんなら俺も一緒に殺せ」

撃てなかった。
状況を飲み込めていない俺の判断が遅れたせいで真山は死んだ。

殺される瞬間、真山はけだるげに面を上げ、立ち上る紫煙を目で追いかけた。
その先に誰かを見たのだろうか・・・。

俺はいつの間にか数人の男達に囲まれていた。
鈍い痛みと共に記憶が途切れ、目を覚ましたのは病院のベッドだった。

心に強く刻まれたところだけをきっとこうして甦らせて、
覚えていないところは思い出すこともできずにいるのかも知れない。

気がつけば、自分のこめかみに銃口を当てたまま俺はその場で立ち尽くしていた。




タグ:当麻 SPEC 瀬文
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:テレビ

be with you [あなたと一緒に] 20 [SPEC]

10分ばかり車を走らせ、古い倉庫街を通り過ぎたところで
吉川は何かに気づきブレーキをかけた。

遠くに見える、突如灯りが消えた雑居ビル。





隠れ家的と言えば聞こえはいいが、賑わいとは程遠い人通りもあまりないような寂れた場所、
いわゆる『場末の酒場』といういうやつだ。

入口のドアを開けばすぐにカウンターに行きつく狭い店内は、
壁のけばけばしい赤いビロード風の生地が艶をなくしている。

薄明りの中に立つ、長い黒髪。細い腰。
すらりと伸びた形のよい脚が惜しげもなく晒されている。
こぼれるような艶めかしさというのではなく、瑞々しさの中にひっそりと色香を含んだような女。

その女の前に座る一人の男以外には客らしき姿はない。
艶のあるスーツを身に纏った男は
能面のように表情がない端正な顔に冷ややかで静かな狂気を漂わせている。

「ねぇ、秀人」

女は親しげに話しかけながら、琥珀に満たされたグラスをカタリと揺すってカウンター越に男の前に差し出す。

ほんの一瞬見せる少し陰のある寂しげな表情、
ベッドの中でしか見せない縋るような目、
そういういつもは誰にも見せないような顔をしたあなたが好きなのだと
胸板に耳をあてた時に聞こえてくる啜り泣きような心の叫びが愛しいのだと
声には出さす、女は呟いた。

「なんだ?」

男はネクタイを緩め、シャツのボタンを1つ2つ外してからグラスを手に取る。

琥珀の液体が喉に流し込まれる度に、ゴクリと上下する喉仏を女は黙って見ていた。

乱暴に眼鏡をはずし、手で大きく顔を覆った頃、やっと女が話を続けた。

「清々しいまでに孤独に浸る姿ね。何かあった?
 あたしなんかに、言う訳ないか...」

「そういえばあの店であんたが話しかけた男って、どことなくあんたに似てたわね。
 あの男、一緒にいた娘(こ)殴ったりして不機嫌そうに見えたけど・・・ふふっ。
 少なくとも、あの娘のこと凄く愛してるわね。
 分かるのよ、あたしにはね。素直じゃないのよね、きっと二人とも」

「素直に抱いちまえばいいだけだろ、女なんて」

「素直じゃないのは、あたし達も負けてないと思うけど・・・」

「おいおい、好きだの嫌いだの言い出すんじゃねぇだろうな?
 止めてくれ! 俺は女なんか信用しちゃいねぇ。誰も信用しちゃいねぇ」

「フン! 本当は苦しいくせに、いきがってんじゃないわよ!
 『馬鹿でなれず、利口でなれず、中途半端でなおなれず』ってヤクザがよく言うけど
 馬鹿で、お利口で、半端者のあんたは所詮ヤクザになんか向いてないのよ」

「殺されたいのか?」

「殺したいなら、殺しなさいよ!」

女は怒りの中に憐れみを含んだ目を向けた。

「うるせぇ! お前だけはそんな顔すんじゃねぇ」

男が殴りかかった女の手首を掴んだ時だった。

「ガシャン!」

窓が割れる音と共に辺りに煙が充満し、電源が落ちた。



灯りが消えた雑居ビルを目指して吉川と当麻が狭い路地を走る。


中から出てきた厚みの無い上半身、少し重心を左右に揺らして歩く影。

「あれ、石原やないか!」吉川が叫ぶ。

パンと乾いた音が辺りに響き渡る。

ビルの外にまで立ち込める煙。

血と硝煙の匂い。

女の悲鳴。

「逃げろ! お前は生きろ!」

男の掠れた声。

「I'm really glad I・・met・・・you.」(お前と出会えて良かった)

とぎれとぎれに最後の言葉を言い終えると、鮮血を撒き散らしながら女の腕に倒れ込む。

「ひ・で・と・・・」

みるみる広がってゆく血だまりを女はただ茫然と見つめていた。

食うか・・・食われるか・・・
そこでしか生きられない闇の生き物のように
いつ自分が食われる側に回るかもしれない恐怖に慄きながら
それでもその世界を離れようともせす
愛されることにも愛することにも背を向けて生きた
哀しい男の最期だった。

それを見ていた当麻の目には、目の前の二人の姿に瀬文と自分を重ねたのか
うっすらと涙まで浮かんでいる。

「せ・ぶ・み・・・さん」

「当麻、しっかりせんかい。
 そいつは瀬文やない。瀬文は死んだりせん」

吉川に軽く頬を叩かれ、目に光を取り戻した当麻が叫ぶように口を開く。

「こんな男でも殺すことはねぇだろう! 浅倉の野郎!
 人の命を何だと思ってやがる。許せねぇ」

「あたしは石原を釣ったんじゃない。
 本当はそうするように仕向けられてた。むしろ釣られたんだ」

「そうか・・・、狙いは瀬文さんなんかじゃない!」

当麻の声に重なるように
石原の懐に手を伸ばし取り出した銃をコメカミに当てた女が呟いていた。

「ひでと・・・。あたしも一緒に行くよ・・・」

それに気づいた吉川が駆け寄る。

ほんの一瞬の差だった。
リボルバーから空気を切る音が聞こえて、この世から哀しい女が消えた。

「当麻、見るな!」

そう言って振り向いた時。どこにも当麻の姿はなかった。

「当麻、どこへ行きおった?
 そうや、瀬文に電話や!」

大きな独り言を言いながら懐から携帯を取り出した。

「瀬文。すまん、当麻が消えよった」



未詳では、吉川からの電話を受けた瀬文が慌てていた。

「なに? そこはどこだ? わかった、今すぐ行く」

通話を切ったばかりの携帯が手の中で再び着信を告げた。

画面には《餃子女》の文字。

「当麻か?」

「狼さん、遊びましょ♪」

「誰だお前?」

この言葉を直ぐには理解できず瀬文は顔をしかめ、
当麻の言葉を必死に思い出す。

『《狼》「憤怒(激情)」WRATHは、きっと瀬文さんです』

「浅倉か? 当麻はどこにいる?」

「大事なものを無くした場所。あんたは知ってるよ」

それだけ言って電話は切れた。

瀬文の頭の中でジリジリとした刺激が広がっていった。







石原さんが好き過ぎました。
石原さんの世界ならいくらでも書けそうです。(笑)
でも、いい加減この辺で死んでいただかないと話が進まない・・・。
さようなら、石原さん。(・_・。)グスン

次回こそは、瀬文さんが活躍してくれると思います。多分。きっと・・・。

では、また。


タグ:当麻 SPEC 瀬文
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:テレビ

be with you [あなたと一緒に] 19 [SPEC]

「石原が「強欲」で瀬文さんが「憤怒」・・・二人は直接関係ない・・・なら・・・
 じゃあ、瀬文さんを誰が? 真山さん?」

「当麻、さっきから何一人でブツブツ言うとるんや?
 真山はもう死んどるでぇ」

「それじゃあ、真山さんを殺したのは瀬文さん?」

「そんなアホな!」

「う~ん。石原は・・・トラップ?・・・だとしたら・・・」

吉川の運転する車の助手席で、当麻は目を閉じ頭の中で解を導き出そうとしていた。

「もう・・・殺されてるかもしれませんねぇ」

突然、カッと目を見開くとぼそりと言葉を吐き出した。





見知った顔でもいるのか、それとも元マル暴の感か
吉川は無遠慮にドアを引き開け、ドカドカと一軒の店へと入っていく。

けばけばしい女たちと安っぽいインテリア。
下世話な会話と品のない音楽が後ろから付いて行った当麻の耳にも否応なしに飛び込む。

吉川は入口にいた若い男と少しばかり会話を交わし
そいつが視線を送った先にいる男に近づいていく。

煙草の煙の向こうには一見して、それと分かる風貌の男。
椅子に深く腰をかけ、長くもない足を組んでいる。

男は吉川を見つけるなりやれやれという顔をしてから
後ろに立つ当麻をチラリと値踏みするように見た。
睨みつけたところを逆に睨み返されたが、そんなことに怯む当麻でもない。

「女連れとは珍しいですなぁ、吉川さん」

咥えていた煙草を踏みつけながら声をかける。

「こいつは、こう見えても刑事じゃボケっ!
 それより、石原を見んかったか!」

「石原? 山王会のか? 知らねぇ、なあ」

鼻で笑いながら答える男の胸座を掴み、吉川は自分の方に引き寄せる。

「なら、あいつを狙うとるヤツを知らんか?
 さっさと吐け! いてもうたるぞ!」

「そんなもんわかりゃしないですよ。
 あいつを狙ってる野郎なんてゴマンといるんでねぇ!」

「それじゃ、あいつが連れとる女はどこの誰や? どこにおる?」

「女?」

一瞬、眉間に皺を寄せたがすぐにもとのヘラヘラとした笑い顔に戻る。

「誰のことだか分かりませんねぇ。
 あいつを相手した女もゴマンといるんでねぇ。
 大体、あいつは女なんか信用してない
 金しか信用してない野郎ですぜ。
 2日と同じ女といるはずもねぇ」

いつの間に取り出していたのか、当麻が向けた銃口が男のコメカミにめり込んでいる。

「物騒な真似はよして下さいよ」

男は両手を軽く上げ、軽く振っておどけて見せた。

「なめくさった話ばかりしやがって、このチンピラが!」

詰め寄る吉川に身じろぎ一つせず、言い返す。

「そこまで言うなら、石原と女を探してる理由を言えよ! 吉川さんよぅ。
 なんかあるんだろう?」

「仲間を・・・」

「石原と一緒にいた女を探してんだよ! 仲間の命がかかってんだよ!
 教えろよ! あんた何か知ってんだろ!」

当麻が、肩を震わせながら言い放った。

「当麻、やめとけ!」

このままでは埒が明かない。
吉川は焦ってはいたが慌てなかった。
威圧的ではあるが静かに話し始める。

「早くしねぇと、石原も女も殺される・・・二人ともな」

「石原もヤグザの端くれだ。いつか殺されることなんかあきらめてんだろうが、
 これはヤクザの抗争なんかじゃねぇ。せめて女だけでも助けてやりたいんじゃ」

「そうか・・・俺も昔・・・、そうだな、あんたになら教えてやるよ」

男は、壁に貼ってある日焼けた地図のある1点を目で示した。

「女のいる店だ、石原もきっとそこにいる。 早く行け!」



タグ:当麻 SPEC 瀬文
nice!(1)  コメント(2) 
共通テーマ:テレビ
メッセージを送る

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。