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美しい罠 - 詩にのせて [美しい罠]

槐、今回は格好つけさせてあげる。でも心ゆくまで苦しむがいいわ 編

LOOK 「シャイニィ・オン君が哀しい」
http://www.youtube.com/watch?v=_ukdHJxt3F8

シャイニィ・オン

星も見えない夜に

君の姿

浮かんで消える

消えた淡い秘め事に

今さら悲しむこともないだろう

オンザロック一息に飲んで

忘れよう Sing a Song of Billy Joel

孤独さ 俺もそのひとり

傷口いえないまま

Maybe come back

辛いことばかりで

君がいなけりゃ So Cry

シャイニィ・オン 想い出の砂浜を

浮かべるたびにまた涙があふれる だから

シャイニィ・オン せめて表向きだけ

今も君を忘れはしない

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「わらの女」と「美しい罠」 2 [美しい罠]

フランスはコートダジュール。
カンヌのカールトンホテルの一室。

飾り戸棚の上には、大きな銀の壺があり、そこから、真紅のバラがあふれていた。
全部で三十七本。彼女はそれを数え終えたところだった。
銀の壺に入ったこの花が、富の力を具体化していた。

やがて彼女が待ち合わせの場所に案内されると
六十あまりの、上品で地味な、しかも非常にエレガントな紳士が、手を差しのべながら、進み出てきた。
ヒルデは微笑し、ほっとして、すっかり嬉しくなった。

彼はヒルデに質問を始める。
「ご家族は、みんな爆撃でおなくしになったんですね。」
「ええ、父も母も、姉と、その子も」

翻訳で生計を立てているという彼女の話にやや嘲笑を含んだ言い方をした彼に
彼女は「でしょうかしら」と言い返してきた。
彼は「いや、失礼、つい口がすべって」と言い、二人はほほえみ合った。

「紅茶でも差し上げましょうか、それとも、ポルトー」
彼はグラスを一つとると、ヒルデにそっと差し出し、微笑しながら、彼女を見つめた。
乾杯をしそうに思えたので、彼女は、それに口をつけなかった。
彼はたしかに、グラスを上げたが、それが特別の意味を持つことは避けていた。
「未来のために」とは言っても、「われわれのために」とは言わなかった。

彼女が宛てた手紙について「経済的な問題を非常に率直に取り上げられた。それに好感が持てました。
あなたがほかの人とは違うことは、お会いしてよくわかりました」
と言うと、彼は、頭を下げて、敬意を示した。
「また、なんの代償もんしに、人から物をもらえるはずはないということをよくご承知でした。
その明晰さには感心しました」

「ほかにも三人ばかりまったく同じ理由で気に入った人たちも、あなた同様、
私の好意を受け入れてくれて、最近、ゆっくりと話し合ってみました。
はっきり言うと、選択の順序として、私は、あなたを最後に残しておいたのです」

「あなたは、相手がたとえ病人でもサディストでも、なんらかの障害を持っていても、
それを乗り越える強さがある、ということでしたね。」

「この幸運の機会に恵まれるのを、私は、もう何年も前から、ねらっていたんですもの。
ですから、財産を手に入れるためなら、いやだと思うことなんて、何一つ、ほんとうに何一つありませんわ」

「私は、もちろん財産とひきかえの夫なら、きっと、お化けみたいな人か、
それとも、狂人のような人に違いないと思いました。
ところがお会いしてみるとあなたでした。
あなたのような魅力をお持ちなら、財産のことなど持ち出さずに、好きな女をお手にいれになれますもの。
だとするとなんのために、あんな広告をお出しになったんでしょう」

「正直なところ、あなたのような夫を持つなんて、ちっとも期待していませんでしたわ」

「期待なさらなくて結構でしたよ。あなたの夫になるのは、私ではありませんから。
私はただ、あなたの試験をした。それだけです」

「マエナーさん。あなたは、私の探していた方のようだ」
「私が秘書をつとめ。その片腕になっている人が、世界的な財産家なのです。
その人は年を取っていて、病気で。かなり異常な気むずかしやです。
しかし、その人のお金は、何もかも笑って我慢させるほどのものです。」

「二人で力を合わせれば、何もかも手に入れることができるかもしれない。
私はあなたを、どうしたら席につかせられるかを知っている。」

「あなたは私のおかげでせその席につくことができる。その感謝のしるしをいただきたいのです。」
数字で言いましょう。彼の死んだとき、私宛の遺産のほかに、当然私の分け前だと思われる額、二十万ドルを払っていただく。」

「もし、あなたがいれば、二十万ドル余分に手に入れる可能性がある。
これはやってみて損はない。どうですか」

「今、お話したことをよく考えておいてください。私達の意見が一致したら、
そのとき、もっといろいろな情報をお伝えしましょう」
そういうと彼は立ち上がって、会談が終わったことを知らせた。




類子はテーブルに飾られた紅い薔薇に気付き、数を数える。
その時、扉の開く音がした。
目の前に立つ若く美しい、白いスーツの男を見て
「いいえ・・・」と言い掛けた言葉を飲む。

男は携帯電話を手に彼女からのメールを読んだ。

「私が貴女のメールに魅かれたのも、正にこの率直さです。
しかも貴女は、なんの代償もなしに人から物をもらえるはずがないとよく分かってらっしゃる。」

「メールでは既にご家族はいらっしゃらないようですが、どうなさいました?」

「事故で死にました。両親も妹も。交通事故です」

「私のことなら本当はもう何もかも調べてらっしゃるんでしょ?
今は看護師はやめてパチンコ店で働いていることも、
今日が私の20代最後の誕生日だってことも。」

類子が振り返って薔薇の花を見る。
「あの、29本の薔薇はそれを知ってて・・・違います?」

男が微笑する。
「なるほど。貴女は実に勘がいい。驚きました。
どうやら貴女は、私が求めていた方のようだ。」

「でも不思議。貴方のような方があんなメールで花嫁を募集するなんて。
・・・狙いは何ですか?」

「貴女は贅沢な暮らしができるなら、どんな代償も受け入れるだけの覚悟が本当にありますか?」

「食べる為に毎日あくせく働いて、それをひたすら繰り返すだけの暮らしにはもううんざりなの。
そこから抜け出すことができるなら、たとえ愛情のかけらもない結婚だろうと、
莫大なお金がすべて解決してくれる。そう思ってました。
まさか相手が、貴方のような方だとはちっとも期待していなくて・・・」
少し嬉しそうな類子に男は言う。

「それは良かった。期待なさらなくて何よりでした。
貴女の結婚する相手は私ではありません。私はただ、貴女の試験をした。それだけです。」

「そうと知って、もうこれ以上私の話を聴く必要がないと思われたなら構いません。
どうぞ今すぐ、これを持ってお帰りください」

類子が箱を開けると、中には類子の赤い帽子が入っていた。

それでも聴くという類子に男は話しを始める。
「実は、あなたにある資産家を紹介したいのです。
その資産家はかなり気難しくて皮肉屋で、人を信用せず
しかも貴女にとっては父親ほどの年齢です。
しかし、どの欠点も、彼が持っている莫大な資産を思えば、
笑って我慢できる程度のものでしかない。
おまけに、年が離れているということは、
そう遠くない時期に莫大な遺産が残されるということでもある。」

「それはつまり・・・金が目当ての計略結婚をしろと、そういうことかしら?」

そう察した類子に男はオレンジを使い遺産の説明をする。

「貴女と私は、それぞれ遺産の4分の1ずつを手にするわけです。
お互いの取り分は、ざっと2・30億、あるいは、それ以上かもしれない。」

「私はその資産家が、どういう人間か・・・その趣味も、その趣向も。
ものの考え方も、充分すぎるほど知り尽くしています。
もし私が女なら、とっくに彼の妻の座に座っていたことでしょう。
だが残念ながらそれは不可能だ。だからこそ、貴女と言う協力者が必要なのです。
・・・もうお分かりですね。貴女と私、二人が組んで力を合わせれば
お互い莫大な金を手にするのも決して夢の話ではない。」

「これは一種のゲームです。
成功するかしないか、やってみるだけの価値はある。」

**********************************************************
槐と類子が出会い、初めて会話をするあたりはほぼ原案に近いようだ。
しかし違う場面もないわけではない。

類子もまたヒルデのように真紅の薔薇の数を数えた。
けれどその本数が意味するものが違うのだ。

コルトが飾った薔薇は富の力の具体化なのに対し、
槐が用意した薔薇は類子の誕生日を祝うかのように29本。
それが、類子を試すためのものだったのではなくおそらくは槐のキザな演出なにであろう。
それに対してアントンはそんなロマンチックなことを考える程甘い男ではないようだ。

「美しい罠」には最終回へと繋がる、赤い帽子が登場する。
このことがこれほどまでに象徴的に使われることになるとは誰が予想できただろうか。

槐は遺産の説明をする際にオレンジを手に取る。
美しい仕草で分かりやすくまさに映像ならではの演出である。

「わらの女」に気になった一文がある。
彼はたしかに、グラスを上げたが、それが特別の意味を持つことは避けていた。
「未来のために」とは言っても、「われわれのために」とは言わなかった。
という箇所である。

槐もまた後に遺産を手にする計画のはずが「不破から財産を奪う」と意味深な言葉を言っている。
二人とも本音を言ってしまっているのだ。

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原案に近い内容なのでほとんど、物語りの説明ばかりになってしまいました。
途中ではありますが、画像を入れたこともある長くなりすぎたのでこの辺で。
続きは明日、アップします。


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「わらの女」と「美しい罠」 1 [美しい罠]

[ご注意]
物語についてのネタバレや個人的な見解方等が多く含まれますので、不快に感じるかも知れないと思われる方はお読みにならないで下さい。読まれてしまった後のでの対処は出来かねますのでご了承下さい。

週間新聞の求縁広告の第六面。男たちがお互いの孤独をわかち合う相手を探していた。


『当方、莫大ナ資産アリ、良縁求ム。ナルベクはんぶるく出身ノ未婚ノ方ヲ望ム。
 世間ヲ知リ、家族係累ナク、ゼウタクナ暮ラシニ適シ、旅行ノ好キナコト。
 感傷的おーるどみす、暗愚ナ人形ハオ断ワリ』



莫大ナ資産アリ・・・。ヒルデガルデはその文字に目を留めた。
それがすべての策略の始まりだとも気づかずに。
ハンブルグで翻訳の仕事をするドイツ人女性、ヒルデガルデ・マエナー。
彼女にあるものは孤独と、貧乏と、そして無益な戦争の産んだ混乱の中の悲劇の連続、ただそれだけだった。それでも、富の力によって夢を実現する。
そんな幸福を夢見、また求めていたヒルデガルデは


『家族も、友だちも、家も、財産も、すべてを失いました私は、これ以上手放すものがないくらい。何も持っておりません。
 恋愛を夢みたりすることも、まったくありません。ただ、よい暮らしがしたいと願っているだけです。
 たとえ、どんなことがあっても、あなたが病人でもサディストでも、なんらかの障害をお持ちでも、私は、それを乗り越えるだけの強さを持っているつもりです。
 私のほうの条件はただ一つ、あなたのお申し出ていらっしゃるぜいたくでゆとりのある生活をさせていただきたいだけのことだけです』



慎重にそう手紙をしたため、相手の反応を何週間も待った。
じれったい期待にそろそろ絶望しはじめた頃、返事が届いた。


あなたのお手紙は一度拝読しただけで、ただちに、私の注意を引きましたが、一応、ほかのお返事にも目を通さなければならなかったしだいです。あなたが、すこしの偽善も持たれないことが私の心をひきつけたのです。自分の気持ちをあのように述べているのは、あなただけで、私が長いこと探していた、大胆で積極的な若い現代女性という希望に、あなたは、ぴったり合っていると思います。お会いできる日を楽しみにしております』


飛田類子はパチンコ店でただ食べるだけの為に働いていた。

息抜きの煙草に火をつけるように、携帯で知り合った男とつかの間をベッドで過ごし、
それすらも退屈な日常になっていた頃、一通の奇妙なメールがその目を捉えた。


『求ム花嫁、当方、莫大ナ資産アリ。デキレバ看護師資格アリ、
世間ヲ知リ、家族係累ナク、贅沢ナ暮ラシニ適スル方。
タダ美シイダケノ馬鹿ナ人形ハオコトワリ。』



「莫大な資産?!」
メールを読んでフフン、と鼻で笑い、類子は煙草を吸う。

類子はほんの軽い気持ちで返事を返した。


『当方、看護師資格の他には、家も家族も友人も、そしてお金も、これ以上失うものすら何もない独身の女です。でも、貴方の言う贅沢な暮らしが出来るなら、どんな代償も受け入れるだけの覚悟と強さを持ち合わせています。たとえ貴方がどんなに病弱だろうと、身の毛もよだつ怪物だろうと、いやらしい変態男だろうと。私が魅力を感じるのはただ一つ、あなたが持っている莫大な資産だけなのですから



物語の冒頭部分である。
もう既に、主人公の女性二人の考え方の違いと物語の大きな違いにお気づきだろうか。

それは、ヒルデガルデは自分から今の生活から這い出す為に前向きであったのにひきかえ類子は軽い気持ちだったこと。
そして物語の中に愛という不確かなものが介在しているか否かである。

「わらの女」にこんな一文がある。
『新聞広告の中でも、アントン・コルフからの手紙にもたった一つある言葉が書かれていなかった。
それは愛という言葉だった。』
愛などというものが介在しないということが明示されているのである。

「わらの女」と「美しい罠」その大きな違いは題名にも現れていた。

原題「La femme de paille」を 英訳すれば「The woman of straw」、「わらの女」そのままである。
straw には つまらぬ人物、価値のない人、 身代わり、黒幕の手先という意味もある。
(巻末には「囮になった女」と書かれている)

「美しい罠」についてははっきりとした解釈はない。
ただ、「わらの女」が一方的に仕掛けられたものであったのに対し、
主人公である類子もまた罠を仕掛けていくのだが
その罠というものが決して自分の欲望を満たす為ではなかったこと、
そこには愛というものが介在しているということを表しているのだろうと自分なりに理解している。

「わらの女」の文庫本を初めて手にしたのはまだドラマが放映中のこと、
類子が不破と結婚した頃だったと思う。
元来、ミステリーの結末や過程を知ることを由としないので、
ドラマにはなぞらえず、本のままの情景を思い浮かべあくまで別の話として読んだのだ。

結末を推理するのは楽しいものだが、あえてそれをせず、
その中に入り込み踊らされ彷徨うものまた一つの楽しみ方だと思うのである。
私がサイコサスペンス等に触れる機会は少なくない。
そんな時はあえて犯人の気持ちになってその作品を味わってみる。
人を欺く鮮やかさ、犯罪者として苛立ちと焦燥、そして犯罪を犯すきっかけやトラウマ・・・
そんなものに翻弄されてみることで見えてくる何かがある。
「美しい罠」もまた、私にとっては例外ではなかったのである。
このブログにある話の数々が生まれたのもそこに端を発するのだ。

また、[活字]と[映像]という媒体の違いもある。

活字には不思議な力があり、同じ文字を捉えても人によって感じ方、思い浮かべる風景さえ違う。
それでいて言葉の一つ一つは人の心さえ操る力さえ持っている。
「わらの女」を読んで、辛く苦しい感情を覚えた人も多いように思う。

映像は、見たものに等しく同じ情報を与え、そして鮮烈にその印象を脳に刻む。
「美しい罠」が本のままであったならこれほどまでに同時に多くの心を捉えはしなかったろう。
どれほど、言葉に例えようとも置き換えられないものがそこにはあって、
登場人物たちが映像を通してその圧倒的な魅力と存在感で迫ってきたのである。

音楽というものもまた不思議なものである。
過去に聞いたことのあるメロディを耳にした時、
一瞬にしてその時間に引き戻されてしまった経験はないだろうか。

サントラの「足音」を聞けば、数々の槐と類子、二人の美しいシーンが目に浮かび、
「日の暮れる場所」を聞けば、つま弾かれる哀愁のあるギターの調べに胸を締め付けられるような切なさに包まれる。
そして、「紅蓮の月」を聞けば最終回のエンドロールのように様々な映像が走馬燈となり駆け巡る。
そんな風に幾年月が流れても、きっと2006年の夏に心は飛んでゆくのであろう。

話しがやや逸れたので元に戻そう。

ここで物語に必要不可欠な人物、アントン・コルフと沢木槐について少し触れておこう。

アントン・コルフは62歳。
カールリッチモンドの秘書。上品で、地味な、しかも非常にエレガントで立派な紳士。
非の打ち所のない身なりで、年齢の割には若く見え、その実、野心家で非凡な才能を持つ。
『金のシガレット・ケースを取り出すと やはり金のライターで、優雅に火をつけた。』
という一文もあるくらいだ、かなり優雅な物腰のいい男であることは明らかであろう。

沢木槐については今更書くまでもないであろうが、
31歳、不破恒大の秘書とは名ばかりの使用人。
ポーカーフェイスでソツがなく、もの腰には品格がありその身なりには隙がない。
星を見上げながら人生を賭けたゲームを思いめぐらせたロマンチスト。
(まあ、何を書いたところでこれを読んでいる方には、槐(高杉氏)の姿しか浮かんでこないのであろうが・・・)

この二人には決定的な違いがある。
それは話が進んでいくにつれ明らかなることなのでここでは触れないことにしておこう。

少し長くなってきたので今回はこれ位にして、次回はヒルデガルデ・マエナーがアントン・コルフに飛田類子が沢木槐に出会うところから始めようと思う。
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箇条書き的ではなく物語りに触れながらのエッセイのようなつくりになっています。
そして、勝手なこと書いてますんでかなりの偏見と思いこみに満ちていますよね・・・きっと。(汗)
どうか石を投げないでくださいませー。


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捏造 ある意味「氷の微笑!?」編 [美しい罠]

降りしきる雨の中、
槐は類子を探して湖のほとりを歩きまわっていた。

雨に視界を遮られながら必死に目をこらし
右へ左へ視線を走らせる。

全身を雨が多い尽くした頃、
視線の先に類子の姿を見つけた。

槐の新鮮に応えるように静かに微笑みを返す
雨に濡れたその姿は、美しさを増し光り輝くようであった。

槐があわてて、類子の元へかけよると
「探しにきてくれたの?」
小さな声で類子が言う。

「さあ一緒に帰ろう」
と言う槐の目を見つめて

「槐、わたしあなたの言うことなんでもきくわ」
「あなたのためなら何でもする。だから・・・」
と強い口調で話始める。

「どうした急に」
そう言いながら、槐は顔をこわばらせる。

「水が怖いなんて・・・そんなんじゃ何も出来ないわ」
「わたし、勇気が欲しいの」
「だから、このままわたしをボートに乗せて湖へ連れ出して」
「恐怖になんて勝ってみせるわ、お願いよ槐」
そう言うと槐の胸に強くしがみつく。

「わかった」
少し息を呑んで槐が答えた。

「ここで待ってるんだ。すぐに用意する」
そう言い走り去る槐を見送る類子の視線は冷たく鋭い光を放っていた。

二人が乗り込むとボートは湖面を滑るように動き出す。
湖のちょうど真ん中でその動きを止めた。

「二人っきりね」
類子が呟く。

二人の視線が絡んだ。

どちらからともなく唇を重ね
何度も何度も互いを求めた。
やがて槐の両腕が類子を包み込む。

促されるようにボートに身を横たえる槐。
その時、類子の手には鋭く光るものが握られていた。

類子を求め手を伸ばそうとした槐に
思い切りアイスピックが振り下ろされた。
槐の白いシャツはみるみる紅く染まってゆく。

雨は一段と強さを増し、
雷鳴が轟く。
鈍色の空には光の帯が一筋流れ
類子の顔を照らし出す。
その顔はまるで美しい悪魔のような笑みをたたえていた。

「どうして? 何故なんだ?」
槐の力ない声が響く。

類子は槐のからだを抱き寄せ
「わたしは、あなたの思い通りになんかならない」
「あなたの手のひらで踊る、バカなお人形なんかじゃないもの」
「どう、騙した女に殺される気分は・・・」
「これであなたは永遠に私だけのもの」
「一人にはさせない。自由になんてさせてあげない」

槐の手にアイスピックをしっかりと握らせていた。

次の瞬間、雷鳴が恐ろしい音をたてて響いた。
類子はアイスピックを握った槐の胸へ飛び込んでいった。

血の気を失ってゆく類子の顔をみつめ
「る・・い・・こ・・・」
微かな声でそう言い残し槐の心臓はその動きを止めた。

類子の瞳に涙が光る。
残りの力を振り絞るように槐の手を握りろうと身体を揺らめかせた。

バランスを崩したボートは天低を返し
二人の身体は静かに湖底へと沈んでいく。

 槐、ごめんなさい。
 でも、これでずっと一緒にいられるわ、永遠に。
 たとえ、私達の行きつく先が地獄の果てでも
 わたしあなたとならどこまでもついてゆく。
 もう、決して離れはしないわ。

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リクエスト(?)があったので書こうかなーって思って
おもしろサスペンス書く予定だったのに
全然、「氷の微笑」チックじゃなくなってしまいました。
すいませーん。m(-(●●)-)mゴメン

はっきり言ってこれじゃ、
何にも解決してませんし、意味わかりませんよね。
まったく何を書いてるんだか??(汗)

しかも、一部で唐突に終わってるし・・・なーっはっは ( ̄。 ̄;)
↑ 二人とも殺してどーする? (。_°☆\(- - ) バシっ!

誰か、湖底から類子さんを救い出して、「女囚類子」を書いて下さいませ。
では、ε=ε=ε=ε=ε=ヾ(;゚(OO)゚)ノ ㌧づら

【余談】------------------------------------------------------------------------------

ココさまの話しを受けて余談を一つ。

「先ず隗より始めよ」

本気ですぐれた人材を集めたいのなら、まず何の取り柄もないような人間を大切に扱うことから始めれば
「隗のような人間でさえ厚遇される」と評判が立ち、すぐれた人材が集まる。
ってな意味ですよね。
因みにこの場合の隗も人の名前です。

現代では「まず言い出した人から始めるべきだ」的に使われています。

「遠大な計画も、まず手近なところから着手せよと」いう意味で解釈して
もし無理やり美罠に当てはめるとすれば

「先ず槐より始めよ」= 槐を攻略できれば他の男を手玉に取るなんて簡単よ。
ってなことですかねぇ? ♪〜( ̄ε ̄;)


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またも、訳してしまいました。 (* ̄∇ ̄*) エヘヘ [美しい罠]

今までも勝手にユエさまの動画に使われた曲の歌詞を訳してきましたが
今回は「Behind These Hazel Eyes」を訳してみました。
「Kelly Clarkson」つながりで以前に使われていた
「Because of You」もついでに訳してみました。
ハイ、今頃・・・ Oo。( ̄。 ̄ )y- ~ 

「breathe easy」が刑務所の中の槐だとすれば
「Because of You」は槐が刑務所にいる時の類子さんというところでしょうか。
そして「Behind These Hazel Eyes」は
第二部に入って槐が出所して山荘に戻ってきた時の類子さんとイメージして訳しています。

なんせ、意訳してさらに類子さんをイメージして書き直しているので
超訳というよりもうイメージ、内容の雰囲気だけって感じです。(_ _ ??)/◇ ワカラン・・・
直訳? それ食べれます? ( ̄。 ̄;) (ユエさまのまね)

長いです、スクロール疲れます。

英語の得意な方、笑ってやってくださいませ。
\(゜・ ゜)神様〜

「Behind These Hazel Eyes/Kelly Clarkson」

Seems like just yesterday
You were a part of me
I used to stand so tall
I used to be so strong
Your arms around me tight
Everything, it felt so right
Unbreakable, like nothin' could go wrong
Now I can't breathe
No, I can't sleep
I'm barely hangin' on

*Here I am, once again
 I'm torn into pieces
 Can't deny it, can't pretend
 Just thought you were the one
 Broken up, deep inside
 But you won't get to see the tears I cry
 Behind these hazel eyes

I told you everything
Opened up and let you in
You made me feel alright
For once in my life
Now all that's left of me
Is what I pretend to be
Sewn together, but so broken up inside
'Cause I can't breathe
No, I can't sleep
I'm barely hangin' on

*Repeat

Swallow me then spit me out
For hating you, I blame myself
Seeing you it kills me now
No, I don't cry on the outside
Anymore...

「瞳の奥に隠して」

昨日のことのようね
あなたと2人でひとつ
そう思えたのは

私は堂々として
強い自分でいられた

私を包み込む腕は 確かにそこにあって
何もかもがうまくいってたわ
壊れるはずなどなかったのに
こんなにすれ違うとは思わなかった
息が苦しいわ 眠れない
やっと生きているだけなの

*未だに、ここで立ち止まる
 今の私は粉々に砕かれて
 何もできない 偽ることも
 運命の人 そんな想いも
 心の奥で砕け散った
 もう あなたが気づくことはないのね
 瞳の奥で 私が流す涙を

何でも話をしたよね
心を許して あなたを受け入れてた
私は大丈夫だと そう思わせてくれた
そんなこと 今まで初めてだった
だけど 今は何も残っていない
一度は立ち直った振りをした
でも心の奥深くまで凍り付いてしまった
だから 息もできない 眠れない
これ以上自分を支えられないの

*Repeat

お願い 私を罵って
あなたを嫌いになれるなら
再びあなたに会ったことが
自分を責めるわ、苦しめる
でも もう涙を見せたりなんかしない
泣かないわ

-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*

「Because of You/Kelly Clarkson」

I will not make the same mistakes that you did
I will not let myself cause my heart so much misery
I will not break the way you did
You fell so hard
I've learned the hard way to never let it get that far

*Because of you
 I never stray too far from the sidewalk
 Because of you
 I learned to play on the safe side
 So I don't get hurt
 Because of you
 I find it hard to trust
 Not only me, but everyone around me
 Because of you
 I am afraid

I lose my way
And it's not too long before you point it out
I cannot cry
Because I know that's weakness in your eyes
I'm forced to fake a smile, a laugh
Every day of my life
My heart can't possibly break
When it wasn't even whole to start with

*Repeat

I watched you die
I heard you cry
Every night in your sleep
I was so young
You should have known better than to lean on me
You never thought of anyone else
You just saw your pain
And now I cry
In the middle of the night
For the same damn thing

Because of you
I never stray too far from the sidewalk
Because of you
I learned to play on the safe side
So I don't get hurt
Because of you
I tried my hardest just to forget everything
Because of you
I don't know how to let anyone else in
Because of you
I'm ashamed of my life because it's empty
Because of you
I am afraid

Because of you
Because of you

「あなたのせいよ」

あなたと同じ過ちはしない
あの時のことは悲しすぎるから もう繰り返さない
あなたのしたことにもう何も言わない
あなたも 辛かったはず
遠い日の出来事だと思いたくない

*あなたがいたから
 私は一人で頑張れた
 あなたのために
 私は危険なことなんてしない
 だからもう傷つかない
 でもあなたのせいで
 誰かを信じるのが怖くなった
 たとえどんな人でも 自分でさえも 
 あなたのせいで
 怖いのよ

私は一人彷徨ってるわ
あなたはきっとそんなこと知ってるはず
泣いたりなんかしない
だってあなたの瞳に潜む弱さを知ってるから
笑わなきゃいけないわ
毎日そうして生きなきゃ
私の心は壊れたりなんかしない
これからどうなろうとも

*Repeat

死んでいるように見えた
あなたの泣く声が聞こえた
眠る時にはあなたはいつも泣いているの
浅はかだった
私をそんなに信じてはいけなかったのよ
あなたは誰のことも考えようとしなかったわ
あなた、私の痛みが分かったはずよね
そして、私は今泣いてるわ
こんな真夜中に
どうしようもないのに

あなたがいたから
私は一人で頑張れた
あなたのために
私は危険なことなんてしない
だからもう傷つかないわ
でもあなたのせいよ
あの時のことを全部忘れようと思ったのは
あなたのせいよ
どうやって人を信じればいいのか分からなくなったの
あなたのせいよ
私には何もない 虚しさだけ
あなたのせいで
怖いのよ

あなたのせいよ
そう、あなたのせい


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コラボ 砂上の夢 [美しい罠]

 ←急だったので使いまわしですが。

「幸福の終わり、終わりの幸福 -ver.A-」 ユエさまの作品

「愛してる。」
たった5文字の言葉に、一体、何の意味があるのだろう。
ずっと、そう思ってた。

ランタンの影が揺れている。
薄暗い部屋を照らすほのかな明かりをあざ笑うかのように、
ゆらゆらと揺れている。
頬にかかった髪をゆっくりと払いのけて、俺は彼女を見つめた。
一瞬、視線が絡まって、彼女は、穏やかに、微笑む。
寒さからか。
それとも、高揚感からか。
頬は少し紅潮し、彼女の透き通るような白い肌を、余計、際立たせていた。
怖いと思った。
その白さが。
それは、まるで、空から舞い落ちる雪の儚さにも似て。
目を離した瞬間に、すべてが、幻であったかのように、消え去ってしまう
気がした。
俺は、思わず、彼女を抱く腕に力をこめた。
こみ上げてくるような愛しさを。
鼓動を。
吐息を。
すべて、拾い上げて。
それでも、この手から零れ落ちていくものがあるのだとしたら、
俺はどうすればいい?
小刻みに動くたびに、歪んだランタンの影が、視界の端をゆらゆらと
揺れた。
規則正しく、ゆらぐ影が、彼女の白い肌を侵食していく。
そこには、砂浜を侵していく波のような、捕らえられないもどかしさと、
それゆえの、美しさが混在していた。
怖いと思った。
その白さも。
その美しさも。
彼女は、抱きかかえるかのように、俺の背中に手を回し、首筋で
甘い吐息をもらした。
その甘美な誘惑が頭の芯を溶かす。
細く、冷たい指が、艶めかしく皮膚を滑った。
それに呼応するかのように、体内をめぐる緩やかな律動が、
波紋のように広がっていく。
俺は宙を仰いだ。
その動きは、男の悦ばせかたを知っている女のものだ、と思った。
影が揺れる。
ランタンの影が揺れて。
揺れて。
視界を、そして、彼女を侵食していく。
もし、この影で、すべてを覆い尽くせたなら、俺は、安堵できるのだろうか。
そんな考えに至って、愕然とした。
それは、論理でも、信念でも、感情ですらなく、ただの哀れな願望だった
からだ。
こんなの俺じゃない。
それが、わかっていながら、俺はこの甘い夢に抗えない。
「槐。」
彼女は、嬉しそうに、そう呼んで、俺の顔を見つめた。
その真っ直ぐな、すべてを見通すような瞳は、初めて会ったときと
なんら変わっていない。
彼女は何も変わっていない。

仕かけた罠。
仕かけられた罠。

囚われたのは俺だ。

俺は、彼女の頬に手をやり、そっと口づけた。
視界が閉ざされ、その甘くて、不確かなぬくもりだけが、俺を支配する。
怖い。
身体が震えるほど、怖い。
強引に、覆いかぶさると俺はまるで、何かから逃れるかのように、
口づけを繰り返した。
彼女は、抗うことなく、それを受け入れる。
今、唇に触れたのは、自分の吐息か。
それとも、彼女の吐息か。
それすら、もはや、区別がつかない。
「・・・っ。」
少し、息苦しくなったのか、彼女は手で、押しとどめ、身体を引き離した。
歪んだランタンの影が、視界から消え、彼女の白い肌が、
浮かび上がった。
「どうかしたの?」
俺の腕の中で、彼女は、心配そうに首をかしげる。
怖い、と。
君を失うことが、どうしようもなく、怖い、と。
言ったなら、君は笑うだろうか。
それとも、「私が信用できないの?」と怒るだろうか。
「槐?」
「・・・愛してる。」
そう呟いて、俺は彼女を抱き寄せた。

たった5文字の言葉で、君を、永遠に捕らえられるなら、
こんな幸せなことはないのに。
---------------------------------------------------------------------------
・・・なんか、捏造もはなはだしいですね・・・(笑)

槐の口パクの「あいしてる」を見ていて、3つほどストーリーが
浮かびまして・・・そのひとつがこの話であります。。
(なので、一応、ver.Aとしてます・・・)

あとの2つは、槐が嫉妬する話と、このバカップルめ( ´∀`)σ)∀`)な槐類
話です~。

ああ、ここまで、突っ走れる自分が怖い○| ̄|_

「幸福の終わり、終わりの幸福」
というタイトルは「小説版スパイラル」のサブタイトルからとりました。
結構、しっくりきて、気に入ってます(´∀` )

今回の話は、類子さん攻め。
槐たん、受けに回りっぱなし。

って、何が・・・?

・・・。

知りません。ワタクシ、まったく、意味がわかりません(/ω\)

ver.Bは、槐に攻めさせてあげたいです(´∀` )
☆ -- ☆ -- ☆ -- ☆ -- ☆ -- ☆ -- ☆ -- ☆ -- ☆ -- ☆ -- ☆ -- ☆ -- ☆ -- ☆ -- ☆

類子さん側から書いてみました。 ここから下は 作者 とんとんです。

「さようなら」
口にできないたった五文字の言葉。
告げられない最後の言葉。

この世に二人きり、
今のわたしは出会ったあの時のまま。
その歓びをあなたに伝えたくて、
「かぁい」そう口にした。
きっと口元からは笑みがこぼれているわ。
この私の笑顔を覚えていて・・・。

ランタンの揺らめく灯りがそうさせたのかもしれない。
あなたの唇が甘やかに「愛してる」と動いたように見えて
言葉を遮るように唇を塞いだの。
優しい笑顔を遮った。

愛おしそうにかきあげられた髪、
その髪の一本までを愛すように、
切なそうな指が微かに震え、
上気を覚えたあなたの顔が、
少し寂しそうな目をしている。
私を抱くあなたの腕に力がこもった。

「槐・・・。このままあなたと星になりたい。
例え朝には消えると分かっていても、
今この一瞬、全てを掛けて燃え尽きたい。
あの蠍座の、赤い星のように・・・」

できるものならこのまま一つになって、
永久に空の彼方で輝きたかった。
槐、私をあなたに刻み付けたい。
例え二度と会えなくてもほんの少しでいいの、
あなたが私を覚えていてくれるように。

あなたの背中をすべるこの指を覚えていて・・・。
あなたの首筋にかかる熱い吐息を覚えていて・・・。
あなたにしがみついたこの腕を覚えていて・・・。
あなたと重ねたこの唇を覚えていて・・・。

想いを指先に込め、
隆起した温かい肩に触れ、
逞しい胸をなぞると、
強い鼓動が響いてくる、
心地よい狂おしさのためか、
あなたの肌は汗を帯び、
その表情は深い恍惚へと変わってゆく。

恨んでないわ、あなたのこと。
許してくれる? わたしのこと。
あなたを忘れない。後悔しないわ
「愛してる、愛してるわ。槐、あなたをこんなにも」
あなたの胸でそっと流した涙だけ置いてゆくわ。

ありがとう、槐・・・。
さようなら、永遠に・・・。

---------------------------------------------------------------------------
ユエさまの作品に触発され、
勝手にコラボってしまいました。
ユエさまー、m(Ⅴ(●●)Ⅴ)mゴメンなさい

類子さん側から攻めてみました。
(ノ ▼▼)ノ ロ ̄* ロウソク落としじゃー
↑ヾ(ーー ) オイオイ それは意味が違うから・・・。


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隔てられた時間 第一章 追憶 第二話 焦燥 [美しい罠]

「バシッ!」
何か強い衝動に突き動かされるように
俺は刑事をなぐっていた。

必死で山荘から逃げ出し
ボートハウスの中、とりあえず必要なものを
手にしたバッグに詰め込みながら
「何故なんだ類子、何故俺を裏切った」
その言葉ばかりが俺の頭の中を駆け巡る。

類子、お前の口から全てを聞くまでは
捕まる訳にはいかない。
足早に真っ暗な山の中へと
溶け込むように身を潜めた。

草の上に横たわり、深く溜息をつく。
星を見つめながら類子の言葉を思い出す。

「私達、一度は愛を感じた時間だってあったのに」

おまえはまだ俺を愛している筈だ。

「それでも、わたしの夫なのよ」

まさか、不破を愛している訳じゃあるまい。

「あなたが今からでも自主するというのなら
あなたと一緒に行くわ、あなたと一緒に罪を償う、本当よ」

お前の思いを感じながら僕は歩みを止めなかった
「俺たちを裁くことができるのは空に輝く正義の女神」
そう信じていた。

「やると決めたわ」

お前の愛を信じていた。
お前の言葉を信じていた。
なのにどういうことだ、一体どうなってる、
あれは嘘だったのか。ずっと俺を騙していたのか。

「・・・貴方が何を言ってるのか、ちっとも分からない」

どうして、何も答えない。
お前が倒れた時、俺がどれだけ心配したか、
不破の「・・・類子は俺の身代わりになったんだ!」という言葉に
どれほど動揺したのかお前には分からないのか。

切なさに、月に浮かべたお前の顔にそっと触れた。
ふと伸ばしたその手で頭に浮かんだ聞きたくはなかった言葉をかき消す。

それは思い出したくなくてもまとわりついて離れない草太の言葉。

「彼女はもう、あんたの事なんか何とも思っちゃいない」

どういうことだ。
やけに草太に親切だと思ったが、
俺を陥れる為に自分の身体を使ってまで草太を抱き込んだというのか。
本当なのか、
だとしたらどうしてそこまでする必要がある。

喉も唇も乾ききっていた。
「くそっ、なんであんなやつと・・・」
思わず、怒りを口にしていた。
草太を殴った時のようにわき上がる怒りで拳を握り締め、
いつしか悋気の炎に包まれていた。

 気がふれたような夜
 とりみだす心を
 どうすればいい
 傷ついた水鳥が
 羽を休めるように
 身じろぎもせず
 風を抱き締めて
 心を凍らせながら
 迷いの森を彷徨い
 やがて疲れ果て
 月の影で夢を見る

朝露に目を覚ますと、さらに森の奥へと入って行った。
この辺の地理には誰よりも詳しいんだ
そう簡単に捕まるものか。

捜索隊の手を逃れながら昼夜が流れた。

 夏の陽射しが用捨なく照りつける草原
 そよ風が木々をを揺らすたびに
 俺の心のようにざわめく

 たよりない手探りを空にかざし
 踏みにじられたぎこちない笑顔が
 涙ににじむのを思い出す。
 信じたおまえに踏みつけられても
 声を枯らして叫ぶことすら許されない

そろそろ類子に連絡を取らなければ、
「出てくれ」そう祈るように携帯を手にした。
だが、虚しくコールだけが響く。
あきらめかけたその時、電話が繋がった。
しかし、その先から聞こえたのはレイさんの声だった。
何を聞かれても何も答えない俺に
「ちょっと待って切らないで、類子さんに替わるわ」
そう答えた。
その言葉を信じ暫く待つと、類子が電話に出た。
「もしもし。今どこにいるの?」
聞きたかった声がした。

「今夜0時、いつもの場所で。必ず来るんだ」
そう用件だけ伝えて返事も聞かず電話を切った。

どれくらい時がたったのだろう。
人の気配を感じ取りさらに草むらに身を隠す。
銃を構えた川嶋達が近づいてくる。
お前に会う迄が捕まる訳にはいかない、
そう祈るように息を潜めた。

照らされた月が水面をゆらゆらと揺らす
僅かな水音とともに映し出される影
その影のような逞しい肢体は
愛しそうに両手で月をすくい高く掲げる
やがてそれは星のしずくのように
キラキラと輝きながらこぼれ落ちてゆく

そのしずくを焦燥と苦しみを沈めるように
裸身に何度も何度も浴びていた。

 ひとりきりの真夜中
 わがままな夢だったのか
 こわれた秤の上で
 問い詰めて わかりたいのは
 気付けない愚かしい俺なのか
 鎖が今の俺を縛り上げて
 わがままな 愛でしか
 もう 気持ちを言えはしない

本当に来てくれるのだろうか、
いや来るはずだ。
さあ、行こう。
類子、お前が待っている。

☆ -- ☆ -- ☆ -- ☆ -- ☆ -- ☆ -- ☆ -- ☆ -- ☆ -- ☆ -- ☆ -- ☆ -- ☆ -- ☆

何だか、何が言いたいのか
全然まとまりませんでした。
読んだ方、意味わかりませんよね、きっと。(- -;)
すいませーん。
そんな訳で気が向いたらこそっと書き直してるかも知れません。

今回、つい妄想に嵌りヤバイ方向に行きかけました。
だって、それだけは書いてはならない禁断の世界なんですもの。
そしたらなーんにも萌えのないつまらないものになってしまいましたわ。
えっ? それ何って?
えーっと、槐一人で萌え・・・槐一人で・・・言えませぬ 。゚(゚´(00)`゚)゚。

でも、またまた槐を剥き剥きしてしまいました。
もはや趣味かも? なーっはは。←笑ってごまかす ( ̄ε ̄;)
どうせ捏造だからいいよね~。チョットだし・・・。
誰か「いいよ」って言ってーーー。

DVDを見たのも有り、
ユエさまの第4話「最後の敗北者」を読んで
すぐに書きたくなったんですけど
気持ちとは裏腹に一週間もかかってしまいました。
というか、もう前作から2ヶ月も書いていませんね。
この続きは早めにUPしたいと思っています。

ちっとも書かない、話のまとまらない 作者より


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隔てられた時間 第一章 追憶 第一話 動揺 [美しい罠]

その時俺は、一輪の小さな花を手にしていた。
類子に手渡された雨に濡れた小さな花を・・・。

「これ枯らさないでね・・・」

その言葉に秘められた類子の想いと姿を思い出しながら
手の中にある、その花に唇をそっと近づけた。

レイが槐に近づいて来る。

「槐、どうしたのあなたがそんな格好で、おまけにそんなに濡れちゃって」
「この雨の中、傘も持たずに? よほど慌ててたのね」
「そんなに類子さんのことが心配だったってわけ?」
「違う? ね、槐っ!」

そう言うと楽しげに俺の顔を覗き込む。
見透かされたような言葉に顔を歪めていただろう。

やや目をそらしながら

「失礼します」

それだけを言い残し
避けるようにして地下への階段を降りた。

部屋に入ると、グラスに水を満たしそっと小さな花を入れた。
少し乱れた小さな溜息とともに天窓を仰ぐ。
まだ、雨が降り続いている。

「このままじゃどうしようもないな・・・」
ふっと独り言を呟くと
タオルと着替えを手に、ずぶぬれの身体を引きずるように部屋を出た。

俺は少し混乱した気持ちを晴らすように
シャワーの蛇口の下に頭を突っ込んで水を浴びた。
水の冷たさが全身に滲み込んでゆく。

槐の深い溜息とともに、その水はじわじわと温かくなる。

透明な粒達は槐の髪をしたたり、首筋を通り、やや隆起した胸で踊る。
引き締まった腰に流れ、足元にすべり落ちてゆく。
あるものは、なめらかな頬を伝い腕の筋を通り、太ももを刺激する。
逞しい肩に触れ背中に流れて心地よさをもたらし
肌の隅から隅まで余すところなく纏わり着いてゆく。
やがて肌は高揚をおびて、ほのかに紅く染まっていった。

俺は類子の涙を全身に浴びているように感じていた。
それは、皮膚に染み込み、細胞の一つ一つを痛めつけていく。
その痛みに、全身を振るわせた。

雨粒に似たそのしずくに
水辺に佇む類子の姿を思い出した。
そう自分を見つめた強い眼差しと冷たい微笑を・・・。

『騙した・・・ああ、騙したさ。でもお前を裏切ったんじゃない』
『嘘じゃない! 嘘じゃないんだ、類子!』
『・・・こうするしかなかったんだ』

自分への苛立ちと類子への苛立ちと
目を閉じれば浮かぶ類子の姿と溢れくる想いで
眠ることもできずただぼんやりとしていた。

不破の怒鳴り声が地下にも響いてくる。
「類子はどうした、まだ見つからんのか?」

『何? 類子! 類子がどうしたって?』

俺は飛び起きると秘密の小部屋を開け、類子の姿を探した。
だが願いも虚しくそこに類子の姿はなかった。

着替える時間ももどかしくシャツだけを握り締めて階段を駆け上がる。

『本当にどこか遠くへ行ってしまったのか?』
『俺の前から姿を消したというのか?』

『まさか! 湖に行ったのか?』
俺の頭に悪い予感が過ぎった。

気が付くと、響き渡る雷鳴と激しい雨の中、
傘も持たずに山荘を飛び出していた。

『類子、いやそんな筈はない』
『お前はそんな弱い女じゃないはずだ』

『類子ー!』

心の中でそう叫びながら雨に煙る視界を凝らし
俺は類子を探し続けた。

やっと見つけたその姿に
鋭い光を放つ類子の視線に
雷にうたれたように身動き一つできないでいた。

しばらくして我に返ると静かに流子のもとへと歩き出した。
類子は何も言わなかった。
俺も何も聞かなかった。
手にしていたシャツを肩にかけてやることしかできなかった。

類子は身動きすることもなくただ立ちつくしていた。
ほんの少しでも身体を預けてくれたら
俺は思わず抱きしめてしまっただろう。

雨に濡れたその細い身体を抱きしめたいと思った。
いっそこのまま抱きしめて離さないでいられたらどんなにいいか。

『誰にも渡したくはない・・・だがお前はゲームの・・・』

俺の手が思わず髪に触れようとした瞬間、類子が軽くこちらを振り向いた。

「戻りましょう」
類子はそう言うと歩き出す。
俺はその後を見守るように歩いた。

どちからからも何の言葉も発せられないまま
雨の中、ただ山荘への道を歩き続けた。

そんな類子が、まさか俺と戦おうと考えていたとはな。
あの鋭い視線の先に潜む決心に気づくべきだった。

『あの時、抱きしめていたら・・・』
今でもこの手に残る微かな温もりを頼りに
お前の幻を抱きしめた。

☆ -- ☆ -- ☆ -- ☆ -- ☆ -- ☆ -- ☆ -- ☆ -- ☆ -- ☆ -- ☆ -- ☆ -- ☆ -- ☆

新春1作目は槐の方でありました。
「白い罠」の方は少々お待ちを。

だって、いい加減に続きを書かないとユエさんと最後にコラボれないですから。
まだ、拘置所の中なんですよ。早く刑務所に放り込まないとですわ。
とりあえず、公開しておきますけど、自分が後悔しそうです。
(いつものごとく密かに書き直すかも・・・)
面白くもエロくもなくて、その上短いしね。

槐のシャワーシーンはね、ただ書きたかっただけです。(^^;)
でも、必要だったのでお許しを。
↑その割にはしっかり書いてないか?(てへっ!)

あと、一応考察編とはなってますが、あくまで妄想と捏造によるものですから
あまり真剣に読まないで下さいね。
苦情は受け付けられませんのでよろしく! (^^)/

言い訳がましい、作者より


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白い罠(病院編) 第四話 紅い月 [美しい罠]


イメージ
紅い月は「不吉の前触れ」と言われています。

今回のBGMはこれなどいかが http://www.youtube.com/watch?v=AERFnUBO5MQ

『出口のない檻の中。
 何も感じない。
 もう、慣れてしまった。
 愛などいらない
 なのに悲しい・・・』

その時、院長室の中に類子はいた。

不破はいつものように類子を膝に座らせ、
胸に手を置く。

「止めて下さい。こんなところで」

「今日はどうした?」
「お前にはそれなりのことをしているんだ」
「そんなことを言うな」
嫌がる様子を楽しむように意地悪く笑ってはその手を止めようとはしない。

部屋にノックの音が響く。

「失礼します。沢木です」
「よろしいですか?」

類子はあわてて身を離し胸元を整えた。

そんな様子を気にすることもなく
「ああ、入ってくれ」
不破が答える。

扉が重苦しい音をたて開かれる。

槐が澪を連れて入ってくると
類子は少し戸惑いながら
「では、私は失礼します」
と部屋を出て行こうとした。

不破の傍らから扉に向かおうとする類子と槐がすれ違う。

「あ、待って下さい。飛田さん、ちょうど良かった」
「あなたにも是非、私の婚約者を紹介しておきたかったんですよ」
そう言と類子に鋭く視線を送った。

その視線に類子は思わずその場に足を止めた。

槐と澪は院長の前に立つ。

「院長、こちらがわたしの婚約者の岸田澪さんです」
「初めまして。よろしくお願いします」
と笑みを浮かべ軽く頭を下げた。

やや振り向き、類子にも軽く微笑みかける澪。
「飛田さん、いつも沢木がお世話になっています」

くるりと槐の腕に手を回し甘えた表情を見せ
「ねぇ、槐。今日の夕食、飛田さんにもご一緒にどうかしら。
 おじさまご用で来られないって言うし・・・」
幸せそうに訪ねた。

槐は優しさに満ちた表情をたたえている。
「そうですね、それはいい」
「院長どうでしょう?」

「ああ、わしもあんた達と一緒じゃあてられて困るからなあ。
 話し相手が欲しかったところだ」
不破が大きく笑う。
「飛田くん、いいだろ」

「ええ、喜んで」
戸惑いを必死で隠した様子の類子が答えた。

そんな類子に再び嘲笑うような視線を向け
「では後ほど、失礼します」
軽い会釈と共に二人は出て行った。

その後を追うように
「では、私も失礼します」

「おい、類子」
不破が止めるのも聞かず出て行く。

病院の外の空に夕景が広がる頃

類子は白衣からまるで自分の心を映すような
黒いドレスを身に纏い
地下の駐車場へと歩いていた。

目の前に広がる光景に思わず立ち止まり目を伏せる。

それは、誇らしげに輝く宝石のように美しく光り輝いた澪と
優しく腰に手を回し、さりげなくエスコートしながら近づいてくる槐の姿。

澪は類子の姿捉えると微笑む。
「まあ、素敵だわ、飛田さん、院長も今日はお幸せね。
 こんな美しい方をエスコートできるなんて」
「ねっ。槐」

「そうですね、本当にお美しい」
口元に笑みを浮かべながらも何かを制するような槐の視線に言葉を飲む。

その時、澪の携帯が着信を告げる。
「もしもし、おじさま?」
「ここよく聞こえないの、かけ直しますわ」

「ちょっと失礼します」
澪は上へと階段を上がっていく。

「澪さんのおじさまって?」

「能瀬教授だよ」

「えっ!」
類子は一瞬自分の身を抱き震えた。

槐はやや小声ながらも間近に鋭い口調で言う。
「そんなことより敬吾のことどうなってる」

「どうなってるって?」

「いったはずだ誘惑しろって」

「いったいどうやって?」

「頭がだめなら身体でも使うんだな、あんたお得意だろ」

類子は唇を噛みしめた。

「あと、合い鍵を返してもらおうか、澪といいところであんたに来られちゃ困るからな」
「そんな顔をするな、澪が戻ってきたら変に思う」
「余計なことはしゃべるな、いいな」
「俺とあんたは何の関係もない、わかったな」

澪の靴音が近づいてくる。
「槐、ごめんなさい」
「急用ができて予定より少し早く帰らないといけないの」
「お食事の後、あなたと一緒にいられそうもないわ」
「残念ね」

「そうですか、それは残念ですね」
愛しそうに澪の髪を撫で微笑む。

不破の姿を見つけた澪が二人のもとを離れる。

「どうやら今夜は身体が空いたようだ」
「ちょうどいい、さっきの話の続きは今夜できそうだな」
「後でマンションまで来い」
そう言い残し
不破と澪のもとへ歩き去った。

赤い月の光に仄かに灯された
人の気配さえ消した部屋

ベッドの下 うずくまる影
白い煙が淡く漂う
カラリと動く氷の微かな音
床に転がる瓶
虚ろな体 乱れた髪
閉じられた瞳 小さな吐息

類子がチャイムを鳴らす。

「開いてる!」
とだけ面倒そうに答える。

部屋に入ってきた類子は槐の姿をみつける。
「そんなに飲んじゃ、からだに悪いわ」
そう言いながら槐の手にある煙草を取り上げ
テーブルに置かれた灰皿で火を消す。

「俺に説教か?」
類子の後姿に向かい
うつむいたまま静かに怒りを口にする。

「そうじゃないけど・・・」
一瞬、肩をすくめるが向き直る。

槐がグラスを口にしようとした。
それを制するように類子がグラスに手をかけた。

槐の指を滑り落ちたグラスが氷とともに砕け散る。
破片が類子の指に触れ血が滲む。

槐が顔を上げた。
「見せてみろ」手が差し出される。

「大丈夫よこれぐらい」
振り払おうとした手を槐が掴んでいた。

「消毒はしといた方がいい」
傷口にそっと槐の唇が触れる。

『槐!』
身体の痛みよりも大きく、類子の心の底が悲鳴を上げた。

類子の瞳は寂しげな愛おしさを湛えて槐を見ている。

「さっきから何を見てる?」
「俺の顔がそんなに珍しいか?」
苛立った槐がことばを吐き捨てる。

「別に何も・・・」
「あなた、院長にも何かするつもり?」

「院長が心配か?」
「そうだな、不破の目の前でこうしてやろうか」
片方の手でグイと類子を引き寄せ抱きしめる。

「あいつ、どんな顔をするだろうな?」
「聞いてるのか? なぁ、類子!」
髪を鷲掴みにして自分に振り向かせる。

「あなたがこんな人と知ったら澪さん悲しむでしょうね」
「本当に澪さんを愛してるの?」

「ああ、なんで澪のことなんか気にする?」
「俺のことを好きだとでも言うつもりか?」

「お前は体を重ねたくらいで心まで許す女じゃない。そうだろ」
「だからお前と組むことにした」
「それだけのこと、澪のことはお前には関係ない」

「そんなに俺が欲しいのか?」
「院長よりもよかったか?」
「教授よりもよかったのか?」

「どうだ、言ってみろ!」
「何故黙っている」

「どうしてほしい?」
「ん、言ってみろ!」
「どうしたい?」

地を這うような低い声が響く。

『何故、わたしの口から言わせようとするの。
 黙っていてもわからないって?
 だからって、
 そんなことまで言わせるの?』

「お前がそのつもりなら・・・」
「そうだな、こうしてやろう」

乱暴にベッドの上に座らせると
自分のネクタイをゆっくりとはずす
そして類子の視界を奪った。

『お前はあの女に似ている・・・』
『俺を見るお前のその目はあいつに似ている・・・』
封じ込めたはずの感情がゆるやかに溢れ出してくるのを感じていた。

窓の向こうの遙か遠くを見つめ視線を彷徨わせる。
槐のその瞳は哀しげに紅い月に染まっていた。

「俺と一緒に違う世界に行きたくはないか?」

真近に感じる槐の熱い息と共に
ブランデーの香りが類子の鼻孔を擽る。

槐が親指と人差し指で両頬を押さえ、軽く口を開かせる。
類子はそこから伝わってくるひんやりとした感触に身を震わせた。

暗闇の中で
霞の向こうから顔を覗かせた
紅い月を瞳に浮かべ
涙が頬を濡らす温かさに類子は身を任せた。

槐の指に類子の涙がつたう。

「槐?」

「何だ?」

「どんなに手を伸ばしてもあなたの心には届かないのね。
 あなたに抱かれる度に私の温度は一度ずつ下がっていくわ」
「涙さえ凍りついて・・・ううん、何でもない」

『あなたの中で死んでしまうのかもしれない』
類子の心は決してたどり着けない答えを求めた。

「欲しいんだろう?」 
ゆっくりとした口調で、槐がやさしく囁く。

ふいに槐の唇が類子の呼吸を妨げ
力強い腕で自由を奪うほど抱きしめた。

槐の広い胸の中でその体はなすがままに波打たされては
熱を帯びてゆく。

それでも白磁のように冷たく滑らかな肌は
紅蓮の焔(ほむら)に包まれ
胸も腕も、髪すら染めて
捩じ込むように深い場所に自分自身を沈めて行く。

わずかな振動にもすべてが崩れ去りそうな儚さと
情熱と焦燥と押し殺した感情が二人を一つにしていった。

『出口のない檻の中。
 確かに感じた
 あなたの手触り
 忘れない
 冷たい眼差し
 あなたの言葉
 忘れない・・・』

-------------------------------------------------------------------------
長らくお待たせいたしました。(←待ってないって)
槐医師を一人じめしておりましたの。

何度も書き直してました。
つい、類子さんに感情移入してしまうと手がとまってしまう、そんな繰り返しで・・・。
もう、何回書き直しても同じだ、と居直ってUPすることにしました。

相変わらず意味不明の箇所もあるかもしれませんがお許しを。


白い罠(病院編) 第三話 愛人 [美しい罠]


イメージ

BGMはいかが http://www.youtube.com/watch?v=qNoWPhA6Ilc

深夜、静まりかえった病院

槐は休憩室に入るとソファに深く腰掛けた。
眼鏡をゆっくりとはずしテーブルに置く。
手にしていた煙草の箱を開けその中の1本を口にする。
ライターのカチッという音。
槐の深い息とともに煙草の先が赤く燃える。
軽く目を閉じぼんやりと何かを考えていた。
槐の身体を白い煙が纏い始める。

扉の開く音に目を開ける。
その目に映ったのは類子。
「あ、沢木先生!」
「こんなところにいらしたんですか」

「ええ、何か用ですか?」

「いいえ、別に」
「今日はなんだか静かね」

「私たちが暇なのはいいことですから」
類子の笑顔につられ、槐はふっと笑みをもらす。

「こっちへ来るか?」
槐が類子を抱き寄せた。

「どうした? なんだか呼吸が早いな」
「診てやろうか」
そう言うと首に掛けていた聴診器を手にした。
「ボタンを一つ外して」

類子は言われるまま制服の胸のボタンに手をかける。
露わになった肌に冷たい感触が伝わる。
その感触に軽く目を伏せた。
今度は暖かものに触れられた感触に目を開く。
槐のしなやかな指がゆっくりと蠢めいている。
やがて類子の胸に顔を埋めると、その鼓動を聞いた。

その顔は母に抱かれた子供のようにとても穏やかだった。

「確か明日休みでしたよね。あの部屋掃除しておいてくれませんか?」
「手が空き次第、私も行きますから」
槐の唇は話すことを止め、類子の唇を探している。

その時、扉が開いた。

入って来たのは研修医の永井草太だ。
「あっ、沢木先生。院長がお呼びです」

慌てて二人は身体を離す。

「わかった。すぐ行く」
槐は類子の手に鍵を置くと
「これ、渡しておくから」
そう言うと白衣を軽く直し出て行った。

楽しそうに草太が笑っている。
「あれぇ、こんなとこで二人っきりなんてどういう関係?」
慌てて、制服を直す類子を見て
「ふうん、そういうことか」
「あなた、沢木先生の愛人にでもなる気?」

眉を潜めた類子が聞く。
「愛人? どういうこと」
「沢木先生って奥様いらっしゃるの?」

「いえ、今は・・・」

「今は、って?」
「知らないんですか? 先生もうすぐ結婚するんですよ」
「そうなの?」
「そう、知らなかったわ」

「気をつけた方がいいですよ。噂によるとあの人女に手が早いので有名らしい」
「あ、俺が言ったなんて内緒ですからね」
いたずらっぽい目で類子を見つめる草太。
「それじゃ、すぐに戻らないと」
名残惜しそうに出て行った。

槐は院長室に入っていく。
「失礼します。何のご用でしょう」

院長は椅子から立ち上がり
「沢木君、聞いたよ。おめでとう、結婚するんだって」
「能瀬教授の姪御さんとはね、驚いたよ」
「今度、澪さんも一緒に食事でもしようじゃないか」

「ええ、ありがとうございます」
「能瀬教授も、私がこの病院で働いているので安心していらっしゃいます」
槐のポケットの電話が鳴り始めた。
「あ、呼び出しです。すぐに戻らないと」
「失礼します」

軽く頭を下げ、院長室を後にし
誰もいない診察室へ向かった。

携帯を手にした槐は鋭い目で誰かと話していた。
「その件は、そういうことで・・・」
「では、明日」

次の日の夕方
類子は言われたとおり、
マンションを掃除していた。

チャイムの音に弾んだ声で
「早かったのね」
と扉をあける。

そこには槐ではなく能瀬の姿があった。
「こんばんわ、能瀬です」
「沢木君はいますか」

「いらっしゃいませんけど」

「で、どうしてあなたが、ここに?」

「ちょっと、お掃除頼まれまして」

「そうですか」
「では、少し待たせてもらいます」

「ええ。どうぞ」
少し戸惑いつつ返事をすると能瀬を招き入れた。

「何か飲まれますか」
キッチンから類子が聞く。

「それじゃ、ファスティスを少しいただけますか」

「ファスティス? 何ですかそれ」
「どれかわからないんですけど」

能瀬は席を立つと類子のいる方へ歩いてゆく。
「これですよ」
そう言うと1本のビンを手にし類子に手渡そうとした。
その時、いきなり類子を抱き寄せた。
「少しお話をしませんか」
「あなたはとても魅力的だ」

類子が逃げるように歩きだすと
能瀬は後ろから捕まえ
無理やりベッドに押し倒す。

「いいでしょ、あなた不破院長の愛人なんですって」
「どうせなら院長より、私の愛人になりませんか」
「その方が生活も体も潤いますよ」
笑みを浮かべて類子を押さえつけている。

「やめて下さい」
「もうじき沢木先生がいらっしゃいますわ」

「そう思って鍵はかけておきました」
「いい加減大人しくしたらどうです。私も手荒なマネはしたくないんですよ」
「どうせなら楽しみませんか」
能瀬の息に顔を背け、全身の力を振り絞り抵抗した。
しかし
いつしか抵抗する力と気力を奪われ、類子は動きを止めた。

「いやー」類子の叫び声が虚しくこだました。

その時、マンションの扉の向こうには槐がいた。

能瀬は身支度を整えると
「では、いずれまた」
そう言い残し部屋を出た。

出てきた能瀬に槐が話しかける。
「どうでした?」
「君が推薦するだけのことはある、いい女だったねー」
「沢木、まさかお前俺より先に味見してないだろうな」

二人は顔を見合わせ笑いあう。

「あたり前ですよ。そんなことするはずがありません。わたしは澪さんと結婚するんですから」
「それじゃ、例の事お願いします」

「ああ、わかってる。じゃあ、あとはよろしく」
槐は能瀬を見送るように扉を背にした。

扉にもたれると小さなため息をつく。
そして何かを考えるように目を閉じた。

やがてドアに手をかけ扉を開ける。

槐はシーツで体を隠すようにしてベッドにうずくまっている類子を目にした。
「来ないで・・・」
そう呟く類子の小さな背中をそっと抱いた。

「一体、どうしたっていうんだ」
「何故、泣いてる?」

「能瀬教授が・・・」類子は声を詰まらせた。

「能瀬がどうしたって? まさか教授に・・・」
「そうか、そうなのか?」
「類子!」

自分の上着を類子の肩にかけると涙を指でぬぐい、しっかりと抱きしめる。
髪をゆっくりと撫で、類子の嗚咽をその胸で聞いた。

静かに時間は流れ、やがて暗闇が二人を包み始める。

「少しは落ち着いたか」

「・・・」
何も答えない類子の腕をほどくとその場を立った。

ブランデーを手にして戻ってくる。
「これでも飲んで、少し暖まった方がいい」

類子はグラスを手に取ろうともしない。
「仕方ないな」
槐はブランデーを口に含むと唇を重ね類子の口に流し込む。
その口許からこぼれた液体が類子の体をつたう。

グラスをテーブルに置き、類子の手を取ると
その体を抱きかかえバスルームに運んだ。

薄暗いその場所
大きな浴槽には月が浮かび
窓の外には遠くの灯りがきらきらと輝いている。

槐は類子をその腕からおろすと出て行った。

類子はお湯に浮かんだ月を手にぼんやりとしている。

槐は生まれたままの姿で戻って来ると
類子の後ろからバスタブに入っていった。

両腕でしっかりと類子を抱きしめ
「大丈夫だ、類子」
「泣かなくていい」
とやさしく耳元で囁く。

表情を変えもせず類子が口を開く。
「あなた結婚するの?」

「一体、誰がそんなことを」

「研修医の永井草太がそう言ってたわ」
「ねえ本当なの?」

「ああ」
「おまえには関係のないことだ」

やや上気した類子の肌に触れ、能瀬が残した薔薇の花びらにも似た証を見つけると
口元に笑みを浮かべ意地悪く言う。
「どうだった? 能瀬は? 良かったか」
「何をされた? どうされた? 言ってみろ」
「言えないのか? どうした」
その右手は喉元をその左手は胸を捉えていた。

「お願いよ、あなたの言うことなら聞くわ」
「だからお願い、そんなこと言わないで」

「だったらお前には一つやってもらいたいことがある」
「なに、簡単なことさ、不破の息子の敬吾を飲みに誘い出してくれるだけでいい」
「男の一人や二人誘惑するぐらいお前にとっては簡単なことだろ」

「わかったわ」

「いい子だ。どうして欲しい?」
淡く照らされたその顔は悪魔のような笑みを湛えていた。

背中に唇を這わせ始める。
『俺のゲームは思い通りに進んでいる。これでいい』
『お前を入れる鳥かごは用意した。お前は俺の思うまま動いていればいい』

その時、類子が呟くように言う。
「ねぇ、槐」
「あなたの優しい言葉はどうしてそんなに痛いの」
「あなたのこの腕はどうしてこんなに冷たいの」
「あなたの鼓動は確かにここにあるのにどうしてあなたはここにはいないの」

類子の涙が水面に浮かんだ月に落ちる。
それは月のしずくのように輝く。

「類子!」
月が雲に隠れるように一瞬、槐の笑み消えた。
『俺は言葉を呑んで、湧き上がってくる得体の知れない感情を押し殺した』

槐が類子を抱くその腕に力がこもる。
月の灯りで淡く照らされた二人の影はいつしか一つに重なりとけあった。

窓の外の丸い月は妖しい光を放ち
その影は水面にゆらゆらと揺れていた。

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とりあえず、UPしちゃいましたが、気になったらこっそり書き直すかもしれません。
(実は今ちょっと手を入れてしまいました)
つじつま合ってるんだろうか、かなり心配。不安だー。
萌えシーン満載してしまった。あはは (^_^;)
昼間に読んだら恥ずかしくて、消してしまうかも。

ところで、この二人○○○ばかりしてるのでちっとも話が進みません。(>_<) この槐先生、本当に悪い男ですよね。ひっでー男! 生かしておいていいんでしょうかね。 結末を考え直してしまいますわ。 隔てられた時間(考察編)書かなくちゃと思いながら(頭がまとまりません) どうしても槐先生が気になってしまう今日この頃です。 BGMですが、別にこの曲に合わせて書いてた訳ではないんですけど なんとなく聞いていたら2番の歌詞がリンクするものがあって・・・。 よかったら聞いてみてください。 画像? あ、あれね。合成だけどちとエロいかもね。


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