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「Montage」 第六話 開かれた扉 [Montage]

記憶の中でそっと、ふたりの手が離れてゆく。
音もなく、色もなく、やがて霞んでゆく幸せな思い出。

そして、彼女の記憶に俺の記憶が重なる。

雨の日には決まって、誰もいない少し高台の公園で街を眺める。

カラフルなパラソルに覆い隠されてひとの姿は見えない。
目に映るのは無機質な建物と空間。

雨の匂い。暗く湿った匂い。
怒号のような雨音。あるいは泣き声のような雨音。
心の悲鳴と、時を止めた世界。
全てを洗い流してくれる。記憶の破片さえも。

だが、その日は違った。
鈍色ににじむ世界の中で蜉蝣ように儚げな女の姿を見た。

雨に打たれるままに佇んで、どこか寒々しく震えている。
髪は水を含んだ重さに耐えかねて頬にかかり
瞳からは雨とも涙ともつかぬ滴が瞬きとともに落ちてゆく。

なぜか、その女から目を離せない。

視線に気づいたのだろう、彼女がこちらを向いた。
無防備な顔だった。

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「Montage」 第五話 青い月2 [Montage]

彼は、私を抱きしめる手を緩め、コートのポケットから煙草を取り出す。
トントンと心地いい音を響かせ煙草を咥えると
カチッという音と共にオイルタイター特有の匂いがたちこめる。
なめらかな仕草で煙を吐き出す彼の顔を、青く鮮やかに瞬く月が照らし出す。

「私の部屋で飲みましょうか」

わたしは、そう口にしていた。

彼は何も言わず、私の腰に腕を回し歩き出す。
「crossover(クロスオーバー)」と書かれた店のネオンサインが二人を見送っているようだった。

陽のささない部屋は切るように冷たい夜気に包まれていた。

乾いた唇が、わたしの唇に重なる。
触れ合うその瞬間、微かに煙草の味がした。
彼の身体はスパイシーな香りに満ちていた。

艶っぽい表情、匂い立つ男の香り、微かな汗の匂い。
膝にかかる体の重さ。頬にかかる息。指の温もり。

それらは甘く媚薬のように、わたしの思考を奪っていく。
彼の身体から漂う「OPIUM」の意味をその時のわたしは知るはずもなかった。

彼の放った矢は私の身体を貫き抜けた。

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「Montage」 第四話 青い月1 [Montage]

いつになったら抜け出せるのだろう
いつになったら自由になれるのだろう
いつになったら・・・

わたしが彼と出会ったのはほんの偶然。
突然降り出した冷たい雨を避けるように入った店でのことだった。

その店のカウンターの奥には並べられたグラスたちが薄灯りに照らされほのかに輝き
さまざまな色の瓶たちもまた宝石のように妖しい光を放って
夜の世界が出迎えていた。

うごめく影を目で追う。
そこに一人のバーテンダーの姿が浮かび上がった。

顔ははっきりとは見えなかったが
わたしは、カウンターを挟んで彼の前へ座った。

カウンターの端に男が一人グラスを傾けている。

わたしは何気なく雨に濡れた髪を気にしていた。

「振り出しましたか? 雨・・・」
カウンターの向こうから声がした。

声の主はすらりと背が高く
鍛え上げられた身体に白いシャツと黒いベストを纏い
蝶ネクタイを締めていた。

前髪の奥からチラっとこちらを見る。
その視線の鋭さにドキッとした。

雨に濡れた私を見かねたのか、何も言わず
おしぼりの他に乾いたタオルを差し出した。

「ありがとう・・・」

そう言って、タオルで雨をぬぐいながら
目の前の男が、まるでピアニストが哀しい調べを奏でるように
アイスピックで小気味良い音をたてて氷を削るのを眺めていた。

カラン・・・

やがて、氷は男の手を離れグラスの中へ。
琥珀色のバーボンが注がれちょっとした手の動きに反応した氷とそれを包むガラスとがぶつかり合い、透き通った音を響かせた。

グラスはわたしの前を通り過ぎ勢い良くカウンターを滑ってゆく。
その先にいた男が慣れたしぐさでそれを受け取る。

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「Montage」 第三話 雨の記憶 [Montage]

雨音がしていた。
あたりはやや薄暗く、誰もいないはずのベッドの傍らにはまだ温もりが残っている。

「まさか・・・チセ・・・」

そんな想いをかき消しながら、天井を見上げていた耳に見知らぬ女の声がした。

「帰るわ」

「誰?」
驚きながら、俺は起き上がった。

「酷い人ね、それはないでしょ」
「ま、いいわ。じゃあね」

見知らぬ女はそれだけを告げると軽く手を振り帰っていった。

扉の閉まる音。
虚しさだけが残される。

見覚えのない女・・・。
記憶のない時間・・・。

別にこれが初めてという訳じゃない。

窓の外はさらに激しい雨が降り続く。
雨音が俺の心をかき乱す。

俺には子供の頃のことはかすかな記憶しかない。
きっといい思い出がなかったに違いない。
そうやって、いつも自分で自分の記憶に蓋をする。

チセと出会ったのも、別れたのも運命なのだと人は言う。
そうじゃない。

運命などどいうものは偶然という名のパズルで
過去を受け入れられない弱い人間が造り出した幻想にしか過ぎない。

運命とは 過去にしか存在しないものだ。
過去にしか存在しないものなんて何の意味も持たない。

未来さえも、いつかは過去になる。
だから、何を求めてどう生きていくかなんて考えたこともない。

チセと出会ったのも、別れたのも過去の記憶の一部に過ぎない。
それでも、俺はこの時、彼女のことをどこかに置き忘れたパズルのピースのように感じていた。

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「Montage」 第二話 幸せな時間 [Montage]


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あの日もこんなふうにセミの声の騒がしかった。

俺が目を覚ました時は、太陽はすでに高く昇りはじめていた。
夏の日差しがまだ覚めきらぬ目に眩しい。

ややぼんやりとした頭のままで、二・三度瞬きを繰り返してから傍らにのチセへと視線を向ける。
枕代わりの俺の腕の中で小さな背中を見せて、かすかな寝息をたてている。
まばゆいばかりの光を受けても目覚める気配はないようだ。

あどけなさすら感じさせる無防備な寝顔、ほんのりと髪の香りが漂ってくる。
思わずその髪に触れ、柔らかな頬にそっとキスをした。

それから、彼女を起こさないようにベッドを抜け出すとキッチンへと向かい
俺は、チセの好きなナポリタンを作ることにした。

がちゃがちゃという俺が立てる音に目を覚ましたのか
キッチンに入ってこようとするチセをリビングへと追いたて
「大丈夫、待ってて」と言ってソファーに座らせる。

チセの様子を気にかけながら、慣れない手つきで包丁を握る。
タマネギが目にしみて困りはしたが、
チセが喜ぶ顔を想像しながら料理するは楽しかった。

「おまたせっ!」

大きな皿を両手に持ち、汗ダクになった俺を見て

「ありがとう、でも待ちくたびれたわ」と彼女は笑った。

穏やかでゆったりとした休日の朝。
たわいのない会話。
チセの笑顔。
何もかもが俺を満たしてくれた。

午後には、二人でチセの誕生日プレゼントを買いに行くことになっていた。

麻のジャケットに身を包みいつもより少しばかりお洒落をしたつもりの俺を冷やかすチセ。
着飾った姿が彼女をいつもよりさらに大人の女に見せていた。

街の中を歩いては立ち止まり、また歩き出す。
そんなチセの後ろを歩いているとある店の前でチセは足を止めた。

「これがいいな」少女のようにチセは少しハニカミながら俺の顔を覗き込む。
彼女が薬指にはめてみた指輪には、星が一つ、その中には小さなキラキラと光る石が埋め込まれている。
俺は、返事の変わりに大きく頷いてみせた。

プレゼント用にラッピングしてもらった指輪のケースを少し気恥ずかしくペーパーバッグに押し込め、店を出ようとした頃には日が西の空に傾きかけていた。

夕食はチセの誕生日だからと、俺は柄にもなく高層階の夜景が綺麗なレストランを用意した。

夜景、それは小さな明かりが無数に集まり織り成す景色。
宝石のように輝き、銀河のように広がる。
ある人には心を癒す優しい灯り、ある人には心を締め付ける灯り。
星の煌めきよりもなお無数のドラマを秘めているのかもしれない。

チセはその瞳にきらめく灯りを映し、
アゴの下で手を組みちょこんと顔を乗せたままじっと窓の外を見ている。
心は遥か遠くにあるかのようだ。

東京駅の灯りがオレンジ色に輝いている。
「チセはどこから来たのだろうか・・・」

ふとそんなことを考えていると、
頼んでおいたバースディケーキが運ばれて来ていた。

ケーキの上にはチセのネームプレートと火の灯されたキャンドルが飾られている。

「ありがとう、煌(コウ)」

「でも、私今日で34才よ。あなたより5つも年上になっちゃったわ」

「ん?」

戸惑う俺に少し寂しそうな顔をした彼女は首を軽く左右にふって
言葉の代わりにキャンドルの灯りを「ふっ」と消した。

それから二人はグラスを軽くあわせ乾杯した。

俺は、広がるワインの香りに誘われるようにゆっくりと目を閉じてその香りに埋没していった。
そのせいなのか、記憶の中の何かが足りない、何かが欠けている。そう感じるのだ。

ただ、帰り道の彼女が何故か少し無口で、
薬指に輝く星が見上げた空のどんな星よりも綺麗だったことだけは今もはっきりと覚えている。

その夜、水に浮かんだキャンドルの甘い花の香りに包まれて
俺は母に甘える子供のようにチセを抱きしめて眠った。

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「Montage」 第一話 悪夢の始まり [Montage]

先日の、「Montage」発売記念トークショーで
「Montage」にまつわるお話を書いてもいいということでしたの
本当に書いてしまいました。(へへっ)
誰か、風の噂にポニキャニの藤田Pさまに伝えてください。←嘘ですよ♪

ただ、このお話は「Montage」をモチーフにはしていますが、
本編から勝手に話を膨らませて創作した物語仕立てになっています。
本編とは登場するシーンや使い方も違いますので、ご了承を。

話の設定や人物設定、本編を見た時に素直に頭に浮かんだことなどは
お話のネタバレになってしまいますので、一番最後に書きたいと思ってまーす。
(藤田さん、きっとこれだけでいいんでしょうね)

まだ、最後まで書き終えてません。(辻褄合うの槐な? ・・・汗)
とりあえず、今回は短めにプロローグだけということで。
では、どぞ。

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それは、切り取られた記憶の断片、
決して開けてはいけない禁断の扉・・・。

暗闇の中を狂ったような車輪が小石を巻き上げながら滑ってゆく。

シグナルが男の心音と呼応するように点滅を繰り返し
ウインカーの音がメトロノームのように時を刻む。

ハンドルを握る男の目は獲物を狙うハンターのように
鋭く闇の中の影を見据えている。

ギアを入れ直す手だけが生き物だと教えるように、
その姿は、全身が黒に彩られ闇に溶け込んでいた。

やがて、重いエンジンの音さえも遠ざかり
一瞬の静寂に包み込まれたその時、
緊迫の空気を振るわせるように携帯の音が鳴り響く。

男の手が携帯へと伸ばされる。

「ああ、俺だ」
「いや、大丈夫」

男は強い口調で言った

「やっと見つけた。もう逃がしはしない」
「お前のおかげで俺は・・・」

闇の中を逃げまどう一つの影を追って
アクセル踏む男の足には力が込められた。

ヘッドライトの強い光に照らされ
まるでスローモーションのようにゆっくりと振り返る影・・・。

「はっ!」

息苦しさに耐え切れず目を開けると全身がひどく汗ばんでいる。
どうやら夏の暑さのせいばかりではないようだ。

いつからだろう、こんな風に目を覚ますようになったのは。
落ち着きを取り戻そうと誰もいないベッドの傍らに手をやり、
ひんやりとした感覚を味わった。

「あれは一体誰なんだ?」
「どうしてこんな夢ばかり見るんだ?」

再び息苦しさに飲みこまれそうになった俺は
大きく身体を伸ばすと勢いよくベッドから起き上がった。

そして、いつものように身支度を整え、街を歩き、
働いて、食べて寝る。
これが、今の俺の生活の全てなのだ。
もう慣れたといえば嘘になるが、
一人でいることもたいして苦しいわけでもない。
ただ、誰も待つもののいない家に向かって歩くのが
どうしようもなく意味のないことに思える時がある。

「チセ、お前はどこへ消えたんだ・・・」

ちょうど1年前、そうあれはチセの誕生日の翌日だった。
今でもあの日のことをはっきりと覚えている。
お前が消えたあの日のことを・・・。


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